東南アジア各国が目標とする2026年W杯出場。ノウハウを提供するJリーグの狙いとは?【アジア戦略のいま #2】

2020年07月07日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

アジアのマーケットを大きくしたうえでトップに立ちたい

現在Jリーグで存在感を放つタイ代表の3人衆。左からティーラトン(横浜)、チャナティップ(札幌)、ティーラシン(清水)。写真:サッカーダイジェスト写真部

 Jリーグが2012年に本格的にスタートさせた「アジア戦略」。8年の月日を経て、そのプロジェクトは今どのような展開を見せているのか。株式会社Jリーグ グローバルカンパニー部門の小山恵氏に話を伺った。

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 Jリーグが「アジア戦略」の主たるマーケットと捉えるASEAN諸国は今後も人口が増加し、2020年代半ばにはASEAN10か国の域内GDP(国内総生産)が日本を上回るという試算も出ている。しかもASEAN諸国は非常にサッカー熱が高い地域であり、今後の成長戦略を考えるうえで「東南アジアの市場を取り込むことは絶対にやっていくべき」と小山氏も想いを明かす。

 しかし、東南アジア諸国のサッカーは、その熱の高まりに対して、いまだ結果で応えられていないのが現状だ。2020年6月時点でのFIFAランキングでは、ベトナムが94位と二ケタ台に位置するが、ほとんどの国が100位以下。自国が出ていないにもかかわらず、街中が大騒ぎになるというワールドカップにもASEAN諸国の出場は叶っていない(※女子ワールドカップではタイが出場)。

 一方で日本はJリーグ開幕以前こそ、タイやマレーシアに勝てない時代があったものの、93年にプロリーグを創設して環境を整備。育成年代の強化にも取り組むと、これらが着実に代表チームの強化につながり、6大会連続のワールドカップ出場という結果をもたらした。クラブシーンでもここ3年はACL決勝に進むなど、日本はいまやアジア有数の強豪国という立ち位置にある。

「昔弱かった日本がこれだけ強くなっている。そのノウハウを教えてほしいというニーズは、東南アジアのどの国も持っているんです。Jリーグとしてはそのノウハウをどんどんシェアしていきたい」

 小山氏がこう語る根底にあるのは、アジアのサッカーマーケットそのものが大きくならなければ、Jリーグ自体の価値やマーケットも大きくはならないという考えだ。「アジアの小さなマーケットで大きくなっても意味がないので、全体を大きくした中でトップに立ちたい。そこで"アジアとともに成長"というキーワードが浮かび上がります」と語るように、将来的な展望を描くうえでも、アジア圏の中でいかにウイン・ウインの関係を築けるかがカギになると見ている。
 

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