15歳でリーガ最年少デビューを飾った“久保同僚”ロメロの知られざる生い立ちーー少年時代に「メッシになる」と絶賛した名手とは?【現地発】

2020年07月06日 エル・パイス紙

15歳と219日でリーガデビュー

マドリー戦でリーガデビューを飾った15歳のロメロ(右)。 (C) Getty Images

 その時、ルカ・ロメロとビセンテ・モレーノは笑顔で話していた。2人の間には直後に歴史的な偉業を成し遂げるとは思えない柔和な空気が流れていた。優しく声をかける指揮官の胸の内には、本来ならカデーテ(U-16相当)に所属している青年の高揚する気持ちを落ち着かせようという親心があったのだ。

「心臓に手を当てたら、心拍数が2000に達するかのようにバクバクしていた。戦術的な指示は出さなかった。とにかく落ち着かせることを心掛けた」

 こうしてルカ・ロメロはラ・リーガ第31節のレアル・マドリー戦(マジョルカは0対2で敗北)で1939年に当時セルタに所属していた"サンソン"ことバオ・ロドリゲスが樹立した15歳255日の記録を上回る15歳219日でラ・リーガ最年少デビューを果たした。

 ルカ・ロメロは2004年11月18日にメキシコのドゥランゴで生まれた。両親はともにアルゼンチン人。サッカー選手だった父親のディエゴ・アドリアンは各国を転々とする生活を続け、メキシコ滞在中にロメロが生まれたのだ。
 
 その後もアドリアンの放浪生活は続き、2007年に家族揃ってスペインに移住した。ロメロは当時3歳だったが、父親がアンダルシア、イスラス・バレアーレスの3部(実質4部)のクラブを渡り歩いている間、サッカーに興じるようになると、みるみる頭角を現わした。最終的に10歳にマジョルカの下部組織に入団するが、それまでにもいくつものクラブから声をかけられていた。

 その1つがバルセロナで、実際に入団テストを受け、見事に合格した。しかし両親の仕事の都合でバルセロナに移住することができず、入団実現には至らなかった。さらにその数か月後の出来事だった。ロメロは当時バルサの一員だったダニエウ・アウベスと地元のフォルメンテーラ島のビーチでリフティングをして遊ぶ機会に恵まれた。

 そのボールさばきにただならぬ才能を感じたアウベスは周囲のギャラリーに向かって「写真を撮っておいたほうがいいぞ。この子はレオ・メッシだ」と呼びかけたという。この模様が収められた動画はネットに出回り、今また話題になっている。

 実際、ロメロとメッシの間には共通点が少なくない。ともに左利きで、メディアプンタ(トップ下)が本職。メッシの若いころのようにロメロも後ろ髪をなびかせている。同じくアルゼンチン人でマジョルカの第2監督として指導に当たっているダニ・ペンディンはロメロについてこう評価する。

「典型的なアルゼンチンの10番タイプの選手だ。競争心、大胆さ、スピードがある。重心の低さはクン・アグエロを彷彿とさせる」

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