前例のない中断から再開するラ・リーガ――それでもフットボールをリスタートする意義とは?【現地発】

2020年06月11日 エル・パイス紙

再開マッチはスペイン随一のダービー

再開節最大の注目カードは、久保建英を擁するマジョルカがバルセロナを迎え撃つ一戦だ。(C) Getty Images

 フットボールのフェスティバルが11日のセビージャ・ダービーを皮切りにリスタートする。今回は無観客での開催とはいえ、熱狂度という点においてスペイン随一のダービーだ。フットボールが今現在置かれている状況をこれほど体現する一戦はないだろう。

 フットボールがフットボールとして存在し始めた頃から、その大衆を動かす力をもっとも発露していた場所がスタジアムだった。しかしこの試合においては、ファンは各所に散り散りになりながら、テレビの画面越しからしか観戦することができない。スタジアムの外からその熱い思いを発散するしかないのだ。

 先行き不透明な時代が幕を開ける。感情の持っていき場がないという矛盾した状況であるが、フットボールはいつものように造作もない様子でわれわれに新たな観戦様式を提供することだろう。

 困難な時期に直面しているからこそ、フットボールが持つ娯楽性が、劇的な効果をもたらしてくれるはずだ。多くの人々が不安やストレスに苛まれているからこそ、フットボールが持つエモーショナルな要素が負の感情の緩和させる一助となるはずだ。

 そう、こういう時だからこそ、どんな環境の変化にも適応し、さらにそこからアドバンテージすら見出すフットボールが持つ多様性が輝きを見せるはずだ。新しい日常の到来が謳われているこの状況だからこそ、それがどのようなものであろうとも大衆を動かすフットボールが持つ特異な力が改めて発揮されることになるはずなのだ。
 
 未知のウイルスへの不安や恐怖が渦巻く中でも、ラ・リーガは敢然と再開への道を模索し続けた。感染者数、死者数とも日々、増加の一途を辿っていた時も、ハビエル・テバス会長はシーズンを完結させることを唯一無二の目標として喧伝し続けた。もちろん打ち切りとなった場合に発生するだろう甚大な損失がその行動を引き起こす原動力になっていたのは間違いないが、再開に向けて邁進し続けてきた。

 新しいフットボールはどのようなものになるのだろうか。確かなのは、これまで通り11人対11人の対戦による試合を審判がジャッジすること。そう、フットボールが誕生した時のままの姿である。そのルールのシンプルこそがその後世界中に普及するに至った重要な要因であるが、異例の中断を経て、フットボールは長方形のフィールドの上で両チームの選手が純然たるスピリットを持って勝敗を競い合うという原風景へとわれわれを再びいざなってくれるはずだ。
 

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