「もし高卒でトップ昇格していたら…」法政大DF森岡陸が4年越しの磐田入団内定を掴むまで

2020年06月08日 安藤隆人

「正直に言うと、あの時に昇格できなくてよかった。法政大に進んで良かったと本当に思います」

法政大のDF森岡。来季の磐田入団が内定している。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「めちゃくちゃ戻りたかったです」

 来季からのジュビロ磐田入りが内定している法政大CB森岡陸の実家は、ヤマハスタジアムから徒歩5分のところにある。生まれは岡山県にある高梁市だが、幼稚園年長の時に親の転勤で磐田市にやってきてからは、人生の大半をここで過ごした。

「小さい頃から家族でジュビロの試合を観にいきましたし、試合に行かない日も部屋にいるとスタジアムの選手紹介の声や歓声、『ゴール!』というアナウンスも聞こえてくるんです。もうそこにジュビロがあることが当たり前の生活でした」

 岡山にいた頃から始めたサッカーにより夢中になっていった森岡少年は、テンマSCでプレーする傍らジュビロのスクールに通っていた。そこからジュビロSS磐田に進み、磐田U-18に進むとU-16日本代表に選出され、U-16アジア選手権に出場(準々決勝で韓国に敗れU-17ワールドカップには出場できず)。それ以降も年代別代表に名を連ねる存在となり、高3では2種登録をされた。しかし、トップ昇格は叶わなかった。

「和倉ユースの後にジュビロ上大之郷グラウンドでのU-18の練習後に、育成部長の方に呼ばれてそこで『トップに上がれない』と言われました。その時はもうショックでしたし、家に帰ってから泣きました」

 悔しかったが、それから4年近く経とうとしている今振り返ると、捉え方は大きく変わっていた。
「正直に言うと、あの時に昇格できなくてよかった。法政大に進んで良かったと本当に思います」

 それはなぜか。当時17歳の森岡はまだまだ幼かった。

「もし、高卒でトップ昇格をしていたら、もうサッカー選手として終わっていたかもしれません。これは大袈裟な表現ではなくて、僕はずっと実家から通いながらサッカーをしていて、食生活や睡眠時間もお世辞にも意識が高かったわけではないですし、親に甘えている部分があって、しかも感謝の気持ちも足りずにそれが当たり前だと思っていた。『サッカーやれていればいいや』という考えがありましたし、地元選手で年代別代表にも入って周りからチヤホヤされて、『プロになれば育ててくれるだろう』『トップに上がればいいや』と思っていました。今思うともの凄く甘い考えでしたし、トップに上がれなかったのは当たり前だと思います」

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