五輪延期、兼任監督では乗り切れない…森保監督が専念すべきはU-23?それともA代表?

2020年03月29日 加部 究

【識者コラム】代表強化には監督を「支える人」と「評価する人」を別に用意する必要がある

五輪の1年程度の延期が決まったいま、森保監督の“兼任”続行は明らかに厳しい状況だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 目指す大会がふたつある。どちらもいつ開催されるか目途が立たず、スケジュールや活動期間が被る可能性もある。五輪は1年以内の開催が宣言されたが、それもそこまでにコロナ禍が収束していることが前提だ。一方2年後の冬にはカタール・ワールドカップが待ち構え、地域予選のスケジュールが先送りにされている以上、フル代表の試合は過密になる。皮肉にも、どう見ても兼任監督では乗り切れない状況が訪れた。

 そもそもこうした不測の事態に直面する前から、兼任監督は機能していない。五輪チームの方は準優勝したトゥーロン国際やアウェーでブラジルを下した遠征でも、指揮を執ったのが横内昭展コーチだった。予め定められたスケジュールだったのに、森保一監督不在のまま基盤作りは進められてきた。しかも同監督は、サンフレッチェ広島では個々の選手と真摯に向き合い育成してきた成果を結実させたが、短時間でスピーディな仕事が求められる代表チームへの適性は未知数だった。いきなり二役を託すのは、あまりにギャンブルが過ぎた。

 先日JFA(日本サッカー協会)は反町康治氏の技術委員長への就任と、同職に就いていた関塚隆氏が今後はナショナルチームダイレクターとして代表活動をサポートしていくことを発表した。今後両者の役割分担が注目されるが、もともと技術委員長の立ち位置には無理があった。代表監督を招聘しサポートしていくという大義名分があり「冷徹に評価していく」というもうひとつの顔を出し難かった。

 例えば西野朗氏はヴァイッド・ハリルホジッチ監督を支える立場の技術委員長だったわけだが、サポートをするという一蓮托生の概念があるために決断が遅れた部分も否定できない。それに本来ならサポートしてきた側が、後任に就くというのは筋の通らない話だ。

 さらに岡田武史監督時代も、早稲田大学の後輩に当たる原博実氏が技術委員長だったが、この関係で「評価を下す」のは至難の業だ。要するに日本人の気質を考えても「支える人」と「評価をする人」はそれぞれ別に用意しなければ、代表強化の効率は望めなかった。
 

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