なでしこジャパン、3連敗のアメリカ遠征で“覚醒した45分”。東京五輪へのヒントは拾えたか?

2020年03月13日 早草紀子

最終戦の58分に岩渕が奪ったゴールは、アメリカ唯一の失点だった

アメリカ戦で追撃のゴールを奪った岩渕。女王をあと一歩まで追い詰めたが…。写真:早草紀子

 東京オリンピックの前哨戦と言える「SheBelievesCup」(アメリカ)に参戦したなでしこジャパン。今大会の日本の失点は、最も集中しなければならない立ち上がりとゲーム終了までの10分間に多く生まれた。特に試合入りの失点は、ゲームプランを水泡に帰す。世界ランク1位のアメリカと対戦した最終戦でも、その悪癖が露呈した。

 7分にFK名手のミーガン・ラピノーに決められてしまう。鮮やかな放物線を描いたシュートは、絶妙なコースを通過してネットを揺らした。日本にとっては、ノーチャンスの見事なFKだった。問題はその20分後の失点だ。GK山下杏也加(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がなんということはない、攻撃の第一歩となる球出しをラピノーへ渡してしまう。そこからパスを受けたクリスティン・プレスにループを決められた。悪癖はとうとう最後の砦にまで及んでしまった。

 日本が覚醒したのは岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)がピッチに送り出された後半から。技術の高い岩渕がボールを持つことで必然的にDFは彼女を止めようと寄せに行く。そこを剥がしながらトップから右サイドへ動いた籾木結花(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)やポストターゲットの菅澤優衣香(浦和レッズレディース)らとポジションを行き来しながら攻撃は活性化されていく。今大会はこのリズムが全くなかった。58分には杉田妃和、中島依美と回り、中央に折り返したところを岩渕がゴール。3人のINACラインで奪ったゴールは、アメリカにとって今大会初の、そして唯一の失点だった。

 残り7分という時間帯にセットプレーからトドメの3ゴール目を食らい、結果1-3というスコアで3連敗を喫して大会を終えた。結果としては惨憺たるものだが、最終戦に関しては初戦のスペイン戦と同スコアであっても、選手たちもなんとか自信をつなぎとめたという内容ではあった。

 とはいえ、最終ラインからビルドアップをする上でのリスク回避策は今大会を通して万全とは程遠く、高確率で失点につながっている。ビルドアップの位置を下げることにより生じるリスクへの意識が切り替わっておらず、曖昧なポジショニング、安易なバックパスがそのままピンチを呼び込む原因となっている。

「後ろからのビルドアップは絶対に必要」と高倉麻子監督は今大会でさらに意志を固めたようだ。ならば、最終ラインと中盤の間のスペースはもはや圧のない安全地帯ではない。その重要性を失点と引き換えに初戦でボランチが痛感し、第2戦ではディフェンスラインに浸透していった。そして最終戦ではGKのところでそれが出たわけだ。これでほぼ全員が代償を払ったことになる。もういいだろう。ここらで今一度リスクを再認識させる必要がある。
 

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