なぜマンCはUEFAに罰せられるのか? パリSGらの“スケープゴート”にされた可能性も――CL追放騒動を追う【現地発】

2020年02月25日 サッカーダイジェストWeb編集部

今始まったわけではない“闘争”

グアルディオラ監督の下で、より強いチームとして成長してきたシティが崩壊しかねない危機に瀕している。 (C) Getty Images

 イングランド・サッカー界に衝撃が走ったのは去る2月14日、バレンタインデーのことだった。

 マンチェスター・シティが来シーズンからの2シーズンにわたり、欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する大会への出場を禁じられたのである。恋人たちがプレゼントを交換し合い、愛を確認する幸せな日に、UEFAは、プレミアリーグ覇者になんとも厳しい"贈り物"を向けたのだ。

 UEFAの発表によれば、シティは2012年から2016年の間に提出したファイナンシャル・フェアプレー(FFP)に関わる書類の中で重大な違反を犯したため、それに基づく処分ということだった。

 発表の夕方。シティの広報担当からメールが届いた。内容は徹底抗戦の意図を伝えるプレスリリースだった。以下がその全文だ。

「我々は、今日のUEFA裁定委員会の発表を遺憾に思う一方、驚いてはいません。自らの立場を守るための反ばくできない証拠を、独立した機関に託して公平な判断を煽ることが最終的に必要になると、常に予想してきました」

「2018年12月。UEFAの主査役は、調査を開始する前から最終的な調査結果と、クラブに言い渡す処分についても、公に予測していました。その彼が担当した、その後の欠陥だらけで、リークされ続けたUEFAのプロセスからも、どのような判断が下されるか大方の予想ができました。そのため、クラブはUEFAの規律委員会に対して、すでに正式に異議を訴えています。この申し立ては、すでにスポーツ仲裁裁判所(CAS)に検証されたものです」

「端的に言えば、今回のケースはUEFAがイニシアチブを取り、UEFAによって起訴され、UEFAにより裁定が下されたものです。偏見に満ちた過程が終了した今、クラブは直ちに公平な判断を求めていくつもりです。そのためには、まずCASに提訴して、裁判の手続きを進めていきます」
 

 UEFAとシティの"闘争"は今回始まったばかりではない。それどころか、両者の対立はFFPが導入された2010-11シーズンまで遡る。

 もともとFFPに賛同していたシティだったが、ことあるごとにメディアや他の"既存"のエリートクラブの槍玉に挙げられ続けてきたことには、不満を感じていた。

 それでも、今回の一件の伏線にもなっている2014年にFFPのルールに遵守しなかったとして、4900万ポンド(約68億6000万円)の罰金を課された際には、処分を受け入れて罰金を支払っている(そのうち3分の2相当に当たる3200万ポンド=約44億8000万円は"執行猶予"の形となったため、実際に支払ったのは1700万ポンド=約23億8000万円)。

 クラブ側は、この時点ですべて清算したと考えていた。しかし、2018年11月に欧州有数のニュース週刊誌で、ドイツの『デア・シュピーゲル』誌がセンセーショナルに報じたニュースにより、シティに対する疑惑の目が再び向けられることになる。

 同誌は、現在は収監されているポルトガル人のハッカー、ルイ・ピントが入手し、自身の運営する暴露サイトの『フットボール・フリークス』に掲載したクラブ幹部間での内部メールや、収入額を改ざんしたシティの収支報告書を世に晒したのである。

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