「チームの要だ」バイエルンを建て直した指揮官フリックの“慧眼”。アラバのCB起用がガタガタだった守備を…【現地発】

2020年02月19日 中野吉之伴

まるで以前からプレーしているかのように…

ウインターブレイク中のフリック(右)とアラバ(左)。指揮官の起用に見事に答えている。 (C) Getty Images

 1月に再開されたブンデスリーガ後半戦、リーグ5戦負け無しで首位を維持しているのがバイエルンだ。前半戦では不安定な試合が続き、監督だったニコ・コバチはクラブを去ることになったが、後任監督のハンシィ・フリックのもとでようやく"らしさ"を取り戻しつつある。

 フリックは選手を適材適所で起用し、本来の能力を引き出そうと尽力している。すると、足枷をつけているかのようだった攻撃陣はピッチ上で躍動するようになり、ロベルト・レバンドフスキ、トーマス・ミュラーらがゴールを量産。これまでアンカーの位置で窮屈そうにプレーしていたMFチアゴ・アルカンタラも、よりペナルティエリアに近いところでプレーできるようになり、持ち味を存分に発揮するようになった。

 変化がみられるのはオフェンスだけではない。バラバラだった守備が整い、4バックの安定感がチームの好調に大きな影響を与えている。中心となっているのは、CBでプレーするダビド・アラバだ。

 かつてペップ・グアルディオラ政権下で一時期CBとしてプレーしたことはあるとはいえ、選手キャリアのほとんどで左SBを主戦場としてきた選手だ。それが、まるで以前からプレーしているかのように、CBの役割を、非常に高いレベルで実践している。

 試合の流れを読むゲームインテリジェンスが高く、状況に応じたポジショニングに秀でており、1対1に強い。スピード、パワーも併せ持つ。個としても、守備組織をまとめるリーダーとしても、その存在感は抜群といえる。

 攻撃でも積極的にビルドアップにかかわり、精度の高い縦パスやクロスで攻撃の起点を作り出していく。フリック監督もそんなアラバのことを「チームの要」と称賛を惜しまない。

 だが、アラバ自身は世間の高評価を謙虚に受け止めているようだ。

「CBが僕の理想のポジションかどうかは分からない。僕はただチームを助けるために、自分のベストを出そうとするだけだ。今は左CBとしてプレーしていて、チームでうまく機能している。でもそれは、チームが守備時にボールに対してすごくいい仕事をしてくれているからだ。おかげで、僕も自分のプレーをうまく引き出すことができている」

次ページ「僕らは自分たちのプレーを、90分間やり通せるようにならないと」

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