自ら会長に電話をして退団を直訴も…カバーニのアトレティコ移籍はなぜ破談となったのか【現地発】

2020年02月02日 結城麻里

「パリには売る気がない」アトレティコにはそんな疑念も

出場機会が減少し、移籍を志願していたカバーニ。だが、その希望は叶わなかった。 (C) Getty Images

 1か月以上に渡って騒がれてきたエディンソン・カバーニの移籍問題は、アトレティコ・マドリーの獲得断念というかたちで決着した。これを受けてフランスでは、カバーニが契約切れまでの5か月間にパリで有終の美を飾れるかどうか、に関心を移している。

 この間、アトレティコは最初に1000万ユーロ(約12億5000万円)のオファーを提示。これに対してパリ・サンジェルマンのレオナルドSDは、「扉」を開けながらも「ふさわしい額ではない」と強調した。するとアトレティコは1500万ユーロ(約18億7500万円)までオファー額をアップ。だが、ブラジル人SDはこれもピシャリと拒否し、ボーナス抜きで2000万ユーロ(約25億円)を要求したと言われている。

 何とかシメオネの元に行きたかったカバーニは、アトレティコ側に自分のサラリー減額を提案して獲得しやすいよう準備。さらにカバーニ自身が、パリSGナセル・アル・ケライフィ会長に電話し、直訴しようとさえしたという。だがアル・ケライフィ会長からは、何の返事もなかったらしい。

 フランスではこうした動きを受け、アトレティコが1800万ユーロ+ボーナスという3回目のオファーまで出すのでは、との報道が流れていた。実際に30日の昼頃までは、その方向も消えていなかったという。

 最終的にアトレティコは、カバーニ獲得を断念。密かに期待していたトマ・ルマールの売却ができなかったことから、財政的リスクが高すぎると踏んだようだ。また「もともとパリにはカバーニを売る気がないのではないか」という疑念も持っていたようだ。

 今回の騒ぎは、どこか昨夏のネイマール残留劇と似てもいる。レオナルドが「高く買ってくれるなら扉を開けるが、決して安売りはしない」の立場を貫いたからだ。2020年夏に契約が満了するカバーニを最終的にフリーで放出しようが、財政的に潤うパリにしてみれば痛くも痒くもないということだろう。

 もし仮にチャンピオンズ・リーグ(CL)でアトレティコと対戦し(理論的にはありうる)、元エースにしてやられるといった事態になれば、それこそ世界中の笑いものになる――。そんなシチュエーションを避けたかったのでは、という見方もある。

 また、マオロ・イカルディがちょうどこの間ゴールを決められなくなっていたことも、影響を及ぼした。CLを前にして、「イカルディでいいのか」「CFのバックアッパーがいなくなる」という議論が浮上、カバーニの存在が、改めて注目されるようになったのだ。

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