【日本代表】アギーレジャパンの切り札に――清武弘嗣の充実

2015年01月11日 寺野典子

「コンディションがいい分、すんなりとチームに入れた」

好調ぶりをアピールしている清武。チームメイトとのコミュニケーションもしっかりと取れている。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 ハビエル・アギーレ政権が発足してからの6試合、一度も代表に呼ばれていなかった清武弘嗣が、23人のアジアカップ登録メンバーに選ばれたのはちょっとしたサプライズだった。しかし、指揮官は清武を買っていた。
 
「ずっとチェックし、フォローしていた。複数のポジションがこなせる選手であり、非常に難しいリーグでレギュラーとして活躍している。代表に値すると思った」
 メンバー発表会見で、明確に選出理由を説明した。
 
 開催地オーストラリアに入って最初の練習試合、1月4日のオークランド・シティ戦が、清武にとってアギーレジャパンのデビュー戦だった。61分、香川真司に代わってピッチに立ち、インサイドハーフに入った。首尾は上々だった。終了間際、岡崎慎司にクロスを送り、ゴールをアシストした。
 
 地元クラブを相手にした翌日のトレーニングマッチ(非公開)では、左ウイングで先発し、後半はインサイドハーフに回った。さっそく複数のポジションを務め、アギーレ監督の期待に応えた清武は、練習中からエネルギッシュで、前体制の時よりも堂々として見えた。
 
「前半は左の前をやりました。最初は、真司くん(香川)が入ってくるスペースを作ろうと、外へ開くことを考えていたんです。でも、監督が求めているのは、スタートポジションが外で、そこから中へ絡んでいくという動きだった。基本的には、中でボールを受けて、周りの選手と絡んでいくのが理想ですけど、僕が外に張って、ヤットさん(遠藤保仁)や真司くんが上がる状況を作ることも重要。そのあたりは臨機応変にやっていきたい」
 
 その言葉や振る舞いからは、現体制下での初招集という戸惑いや気後れはまったく感じられず、アギーレ監督の要求も無理なく理解し、消化しているようだ。
 
「インサイドハーフとアウトサイド。2つのポジションをやるうえで、意識が大きく変わることはないですね。(どちらのポジションでも)基本、中央でプレーするというのは、変わらないと思います。もちろん、インサイドハーフは守備の仕事を求められるので、そこは違いますね。
 
 でも、インサイドハーフの選手がペナルティエリアまで入って行ったり、裏へ向けたり、ゴール前に顔を出すことで、チームの得点チャンスが増えます。だから、下がった位置でゲームを作るパスを出すだけでなく、フィニッシュに絡んでいく意識はつねに持っていないといけない。当然運動量は増えるけど、90分間ボールに絡んでいないといけないポジション。本当に楽しみながらやっていますよ」
 
 練習メニューはほとんどが実戦形式で、いい意味で選手の自主性を重んじるアギーレ監督の指導方法も、すんなりとチームに溶け込めた理由だろう。
 
「ボールを奪われた時の素早い切り替えは求められるけど、基本的には自由だと思います。アギーレさんはアドバイスはくれるけど、『ピッチでやるのは選手だ』というスタンスで、つねにそう言っている。そのうえで、僕たちがピッチでどう表現するか。だから、選手同士で話す機会も多いです。
 
 僕自身は、たくさんボールに触りたいし、触ることでコンディションが上がり、プレーの質も上がってくるので、なるべくボールを受けようと、そう心掛けています。もちろん、探り探りの部分はありますが、戸惑いは全然ないですね。コンディションがすごくいいので、そこまで悩まず、考えずにやれている。コンディションがいい分、すんなりとチームに入れたなと思います」
 
 ブラジル・ワールドカップ後に移籍したハノーファーでは、いまや不可欠の戦力だ。序盤こそ力を発揮できなかったが、直接FKを決めた10月25日のドルトムント戦をきっかけに、存在感を高めていった。
 
「ハノーファーでも最初はよくなかった。でも、監督がずっと使い続けてくれたのが大きかったですね。僕自身も我慢強くなったというか、悪くても考えすぎず、へこまずにやれたから。もちろん、一番我慢強かったのは監督です。それが今に繋がっていると思います」

次ページハノーファーで心機一転、自分を取り戻し、強くなる。

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