「メッシ抜き」の守備戦術を巡るスタッフとの衝突――こうしてバルベルデはバルサの指揮官を解任された【現地発】

2020年01月27日 エル・パイス紙

「ひとりでも裏切り者が出たらハイプレスは機能しない」

リーガでは首位に立ちながら、電撃解任されたバルベルデ(左端)。メッシ自身との関係は良好だったが……。(C)Getty Images

 エルネスト・バルベルデがバルセロナの監督在任中にもっとも悩まされた問題がハイプレスだ。その位置を巡ってクラブの戦略スタッフと議論になったことは一度や二度ではない。

 戦略スタッフが提案したのは、バルサの定番システムである4-3-3の導入だ。ポゼッションの肝であるハイプレスもセットとして位置づけ、バルベルデに対しても、伝統のスタイルの継承を進言した。ただ彼は就任当初からその有用性について懐疑的だった。最大の焦点となったのがリオネル・メッシの扱いだ。

 バルベルデの言い分はこうだ。4-3-3でハイプレスを実践するには、前線3枚が相手の動きに応じて明確にタスクを分担しなければならない。通常は左FWが右SB、CFが両CB、そして右FWに入るメッシが名目上は左SBを担当する。しかしメッシはもう何年も前から攻撃に専念するため、相手SBを追い回すような動きを見せない。そこを突かれることでフリーになった相手DFに余裕を持ってボールをキープする状況を作られてしまっては元も子もない。そう考えたバルベルデは、代案としてミドルプレスを軸にしたフラット型の4-4-2を提示した。
 
 ファンマ・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)はこのバルベルデの案に賛同する。

「そもそも前線3枚で5人(GK、両CB、両SB)をプレスするのは、簡単なことではない。自分たちが比重を置くゾーンからビルドアップさせるように仕向けることになるが、もちろん相手チームはその逆を狙う。1000人の戦士をもってしても、そのうちひとりでも裏切り者が出たらハイプレスは機能しないと言われる。仲間の努力を無駄にしたくない、という強い責任感を持ってタスクをこなせる選手が必要不可欠なんだ」

 バルサの戦略スタッフは、このメッシを議題に上げて反論するバルベルデの振る舞いを、自身が好む4-4-2を採用するための口実だと考えた。事実、彼のフットボールは年々、メッシとルイス・スアレスの得点力に依存する縦に速いスタイルへと傾倒していた。

 バルベルデがヨハン・クライフ率いるバルサでプレーしたのは有名は話だが、その前に在籍したエスパニョールでスペイン版カテナチオの権化であるハビエル・クレメンテの愛弟子であったことを忘れてはならない。
 

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