高校サッカーのトレンドは“6か年計画”の育成。矢板中央のアドバイザー古沼氏も「クラブチームを作った意味は大きい」

2020年01月04日 松尾祐希

「市立船橋の選手の顔を見たら、8割くらいが声を掛けた選手たちだった」

3年連続のベスト8に進出した矢板中央。16年に矢板SCを立ち上げ、“中高一貫”の指導も継続的な成果につながっている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権3回戦]矢板中央2-0鵬学園/1月3日(金)/フクアリ

"最弱の世代"と言われたチームがベスト8の切符を手にした。

 近年、全国の舞台で結果を残している矢板中央。4強に勝ち上がった一昨年は攻守にタレントを擁し、昨年は攻撃力を前面に押し出すサッカーで8強入りを果たした。迎えた今季は昨冬のレギュラー組がひとりもおらず、プリンスリーグ関東でも最下位。前評判は決して高くなく、「ほかのチームから谷間の世代と言われていた」(高橋健二監督)。夏のインターハイも2回戦で敗退し、不安を抱えたまま選手権シーズンへ突入。キャプテンのCB長江皓亮(3年)を中心に接戦を制して出場権を獲得したが、予選は全試合で失点を喫した。それでも、本大会では粘り強い戦いで僅差の勝負をものにし、鵬学園との3回戦では要所を抑えて2−0で勝利を掴んだ。

 3年連続で選手権ベスト8。そんなチームを影から支えている人物がいる。81歳となった今も現場に立ち続ける古沼貞雄アドバイザーだ。1965年から2003年まで名門・帝京で指揮を執り、選手権では74年の初優勝を皮切りに6度制した。まさに高校サッカー界を代表する名将だ。

「サッカーが好きなんですよ」
 08年からアドバイザーを務める矢板中央でもその情熱は変わらない。遠征があれば、チームに帯同し、子どもたちを温かい目で見守りながら助言を送っている。

 とはいえ、50年以上現場に立ち続ける名伯楽も頭を抱えている問題がある。それは有望な選手を集めることが、さらに困難を極めているということだ。

 特に近年の有望株たちは、Jリーグの下部組織に進む選手がほとんど。それ以外の逸材も他の強豪校に分散するため、帝京時代のように事が運ばないという。

「大会が始まる前に市立船橋と練習試合をしたけど、顔を見たら8割ぐらいが声をかけた選手だった。ほとんどの選手が市立船橋、前橋育英、流経大柏に行ってしまうんだよ」

 だからこそ、古沼氏が他の強豪校と対等に渡り合う上で重要になると考えているのが、中高の6年間で選手を育てることだ。

 矢板中央でも2016年から同様の取り組みをスタート。ヴェルフェたかはら那須ジュニアユースを前身とする矢板SCを設立し、中学年代から選手の育成に励んできた。
 

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