「この借りはプロで返す!」セレッソ入団内定のCB田平起也が“ハット達成”晴山への雪辱を誓う!【選手権】

2020年01月04日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

「悔しい。でも岬には得点王になってほしい」

最初で最後の選手権に臨んだ田平。帝京長岡に大敗を喫するも、「3試合すべてが成長の糧になった」と前を向いた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権3回戦]帝京長岡 5-0 神戸弘陵/1月3日/等々力

 夕暮れの等々力陸上競技場に、試合終了の笛が鳴り響く。背番号2の長身DFは茫然と立ちすくみ、ゆっくりと膝に手をつく。高校3年間、最初で最後の選手権が終わった──。

 1月3日に開催された全国高校サッカー選手権3回戦、帝京長岡(新潟)vs神戸弘陵(兵庫)の一戦は、予想外の大差で決着がついた。0-0でハーフタイムを迎えた神戸弘陵だったが、後半6分、同15分と立て続けにゴールを許すと、残り15分間でさらに3点を叩き込まれ、終わってみれば0-5の大敗。谷純一監督は「前半の内容がどうであれ、結果的に5失点を喫したわけですから、完敗です」と悔しさを滲ませた。

 とはいえチームは、4年ぶりの檜舞台で16強進出を果たした。2連勝を支えたひとりが、守備の要であるCB田平起也だ。高さ、速さ、巧さを兼備する左利きの守備者で、卒業後はジュニアユース時代を過ごしたセレッソ大阪への入団が内定している。2019年度はその古巣で特別指定選手となって2種登録され、年代別の日本代表にも初めて選出された。

 今大会を彩る注目株だったが、帝京長岡の怒涛の攻めを食い止めることはできなかった。大量5失点に、ショックを隠せない。

「相手にはかなり分析されていたなと思いますし、僕らは前からガンガン行こうと話してたんですが、疲労もあってかハマらず、いつものようなチャンスも作れなかった。前半から相手の流れでしたけど、あそこを無失点で抑えられたのはひとつの収穫だと捉えています」

 
 レギュラーを掴んで、初めて臨んだ全国大会が選手権だった。田平は「プロに行くことで注目されるなか、落ち着いてやれた部分ともっとやらなアカン部分がよく分かった」と語り、「3試合だけでしたけど、すべてが成長への糧になりました。かけがえのない経験です」と、涙を堪えて言葉を絞り出した。

 対戦相手の帝京長岡には、エースFWで同じU-18日本代表の晴山岬がいた。前半25分過ぎだ。田平と晴山は30メートル近くを全力で並走したところで、ペナルティーエリア手前にさしかかり、晴山にパスが入った。激しく身体をぶつけ合うふたり。スタンドが大いに沸いたマッチアップ。かろうじてクリアして競り勝った田平が「岬とは、代表でもやってきてるんで意地でも負けたくなかった。あそこは気持ちを出して止められて良かった」と言えば、晴山は「止められたのは心残りですね。あそこは彼にもプライドがあったと思いますし、そのなかでバチバチやれて、お互い成長できた」と振り返った。

 しかし、結果的に晴山は後半だけでハットトリックを達成した。その3点目で、田平は目測を誤ってクロスボールをかぶってしまい、背後の晴山に見事に決められている。「結果を残されたことは本当に悔しいです。もしプロでやるとなったらこの借りを返したいし、悔しさをぶつけたい」と闘志を燃やす一方で、「岬はぜひ大会得点王になってほしいし、帝京長岡には優勝を目ざして頑張ってほしい」と、心優しいエールも忘れなかった。

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