おもてなし部、広報部に農業部! 高川学園サッカー部を一枚岩に進化させた“部署制”の全容に迫る!【選手権】

2020年01月01日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

100名を超える部員が「特異な10の部署」で活躍

主将の内田(13番)が挙げた虎の子の1点を見事に守り切った高川学園。2回戦の対戦相手は仙台育英だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 寒風吹きすさぶ等々力陸上競技場で、かろうじて白星を掴んだ。

 大晦日に行なわれた全国高校サッカー選手権1回戦、高川学園(山口)は北海(北海道)に1-0で競り勝った。80分を通してみればボール支配で圧倒されたものの、後半9分にセットプレーから先制点を奪うと、その後は見事な守備の連動とカバーリングで北海の攻撃を封殺。後半はチャンスらしいチャンスを与えることなく、逃げ切りに成功したのだ。

 実は大会前から、個人的に高川学園は気になる存在だった。

 高校サッカーダイジェスト編集部は毎年、『選手権名鑑』なる増刊号を作成している。出場全48チームの横顔や登録予定選手の顔写真・プロフィールを徹底紹介する、恒例の定番MOOKだ。参加校には忙しい合間を縫って、誌面作成のために事前アンケートへの協力を仰いでいる。そのなかに「チーム作りにおいて工夫を凝らしている部分」という項目があるのだが、高川学園の回答はかなり興味深いものだった。

 江本孝監督は、次のように書き記していた。

<部員一人ひとりの所属意識を高め、責任感を持って行動することができるように、部署制度を導入している。また、サッカーだけでなく、様々な経験を積ませるため、農業体験や海での宿泊体験など、自然に触れ合う機会も設けている>

 思わず、三回ほど読み返した。サッカー強豪校ではなかなか見られないアプローチである。

 高川学園サッカー部の今年度の部員数は116名。強制ではないにも関わらず、そのほとんどが10を数える部署のいずれかに所属している。あくまで選手たちによる自発的な活動のため、配属は個々の希望が優先されるという。

 
 ざっと挙げれば、選手の体重チェックや練習内容の作成などを行なう「強化部」、文字通りのスカウティングを実施する「分析部」、広くチームを認知してもらうための「広報部」と、さながらJリーグ・クラブのごとしだ。

 面白いところでは、「おもてなし部」と「農業部」あたりだろうか。前者はメディアと父兄を含めた来客や遠征してくる対戦相手などをどう迎えるか熟考する部署で、後者にいたっては校舎の敷地内に展開された農園で、選手たちがみずからの手で野菜を栽培している。時間を見つけては地域の農家に出向いて作業を手伝ったり、アドバイスを受けたりと、交流も盛んだという。

 ほかにも、「生活部」「グランド部」「道具部」「総務部」「審判部」があり、それぞれの部長が頻繁に会合を設けて意見交換を繰り返し、部署に持ち帰ってはさらにプランを練り込む。縦と横の風通しがすこぶる良好で、チーム全体でトライ&エラーから多くのことを学んでいる。

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