【考察】国内最強ウインガー仲川のシャドーは適正ではない。起用法を再考すべし

2019年12月15日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

特長を活かすならピッチ中央に置くべきではない

相手に囲まれやすい中央エリアでは、仲川のスピードは活きづらい。台湾戦でも窮屈そうにプレーしていた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[E-1選手権2019]日本5-0香港/12月14日/釜山九徳スタジアム

 横浜をJ1制覇に導いたひとりが、仲川輝人だ。右ウイングを生業としたアタッカーは、今季リーグ戦33試合・15得点をマーク。自慢の快足を武器に度々勝負どころでゴールを決め、チームに勝利をもたらしてきた。

 JリーグMVPと得点王を"W受賞"した仲川が、代表に招集されるのは必然と言える。

 しかし、満を持して代表デビューを果たしたE-1選手権・2戦目の香港戦。大きな期待とは裏腹に、その試合で見られたのは、思うようにプレーできず四苦八苦している仲川の姿だった。

 E-1選手権で日本代表の森保一監督は3-4-2-1を主戦システムとして採用している。仲川に割り当てられたのはシャドーのポジションだった。

 ところがウイングが本職の仲川にとって中央エリアに位置するシャドーはかなり窮屈だった。実際に香港戦では、そもそもポジショニングに困惑し、ボールを受けて前を向けたとしても、そこからなかなか突破できずに持ち前のスピードは鳴りを潜めた。
 
 中央エリアを縦に突破するのに必要なのは、スピードではなく細かいテクニック。密集地帯に向かっていくことになるのだから、DFに囲まれても奪われないだけのボールスキルと視野がモノをいう。サイドで縦の広大なスペースに仕掛けるドリブルや相手から逃げるようにピッチを横断するカットインとは求められる能力が違う。

 スピードタイプの仲川が得意とするのはサイドでのドリブルで、中央突破ではない。もちろん仲川のテクニックが優れていないわけではないが、最大のストロングポイントを活かすなら、ピッチ中央に置くべきではないということだ。

 仲川本人は「新たな自分の開拓というか成長が出来る。慣れてくればポジションの仕方も見えてくると思う」とシャドー起用に前向きではある。もちろん選手からすれば起用されたポジションで要求に応えるのが仕事なのだから、そういうのも納得ではある。

 ただし、仲川は今年のJリーグMVPである。そんな実力者を、持ち味の活かしづらいポジションで起用するのはもったいないし、それが得策とは思えない。

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