PK事件から2年3か月後もかかったハッピーエンド――ネイマールとカバーニの“雪解け”【現地発】

2019年12月14日 結城麻里

メディアからもネタにされなくなっていた

その関係性がたびたび問題視されてきたネイマール(右)とカバーニ(左)。だが、ついに和解の時を迎えたようだ。 (C) Getty Images

 2017年9月17日にPKキッカーを巡って勃発した、いわゆる「ペナルティーゲート」が、2年3か月もの期間を経てついにハッピーエンドを迎えた。

「ペナルティーゲート」は当時、世間を大きく賑わせた事件だった。その年の夏にバルセロナから移籍してきたネイマールが、PKキッカーを務めていたエディンソン・カバーニからボールを強奪し、大騒ぎになった。

 名門のエース同士の間で生じた事件はその後も尾を引き続け、王様然とした態度を改めないネイマールの素行の悪さに嫌気がさしたサポーターは、クラブ史上最多得点記録も記録した謙虚なカバーニを愛し続けてきた。

 それからおよそ2年。32歳となった今シーズンのカバーニは相次ぐ怪我に泣かされ、出場機会を満足に得られないようになっていた。"フランスの至宝"キリアン・エムバペの飛躍的な成長やアンヘル・ディ・マリアの復調、さらにマウロ・イカルディの電撃入団などのチーム事情もベテランFWの厳しい状況に拍車をかけた。

 カバーニは、トレーニングで黙々と努力してきたが、気づけば、試合終盤に投入される「バックアッパー」になり下がっていた。現地メディアも、「カトル・ファンタスティック(4人のファンタスティック=ネイマール、エムバペ、ディ・マリア、イカルディ)」の話題に集中し、存在感が希薄なウルグアイ代表FWを取り上げることはほとんどなくなっていた。

 だが、サポーターたちは忘れていなかった。

 12月11日のチャンピオンズ・リーグ(CL)のガラタサライ戦で、68分にイカルディとの交代でカバーニが投入されると、本拠地パルク・デ・プランスの観衆は大喝采で迎えた。すでに4-0でしており、チームもすでにラウンド・オブ16進出を決めていたため、余裕のムードが漂っていた。

 だが、カバーニは必死に走り回った。ボールは来ずとも、味方からパスを呼び込む動きで、果敢にスペースへ飛び出す。懸命なベテランストライカーの姿がそこにあった。

 それでもボールが回ってこなかったため、カバーニは、黙してベンチに戻るしかないと思われた。ゆえに81分にエムバペがPKを獲得した時も、人々の視線はキッカーのネイマールへ向かった。いまや、力関係は2年前からすっかり変化してしまっていた。

 しかし、その瞬間、信じがたい光景が広がった。ネイマールがボールをカバーニに手渡したのだ。

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