【中国戦検証】ラフプレーの餌食になった各駅停車に、失点時の珍現象…森保監督の攻撃マインドは薄れていないか?

2019年12月11日 加部 究

変化に乏しいパスワーク。照準を定めた中国側が勢い余ったチャージで日本の選手を痛める結果に

局面で激しい競り合いが続いた中国戦。時にはファウル覚悟のラフプレーが日本の選手たちを襲った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 E-1選手権を迎える森保一監督のテーマのひとつは「A代表と五輪世代の融合」だった。そして今大会の3試合で中国戦は、五輪世代がクリアするべき課題に最適だった。しかも東京五輪が秒読みに入っている現実を直視すれば、もっと五輪本番を睨んだメンバーにチャレンジさせても良かった。

 だが反面、森保監督も要再検査の状況に置かれていた。五輪代表のコロンビア戦(0-2)、さらにはベネズエラとの親善試合(1-4)での惨敗を経て、開幕戦でつまずくことは許されなかった。もちろん最優先されたのは長いリーグ戦を終えたばかりの選手たちのコンディションだろうが、おそらくこうした諸条件の下で選択されたのが、3バックとボランチに経験を重視したスタメンだった。逆に最前線のトライアングルと両翼は、鈴木武蔵以外は五輪世代を送り出し、短い時間ながらも田川亨介や相馬勇紀もピッチに立った。

 結論から言えば、ギリギリ赤点を免れたというところだろうか。フィジカルで優位に立とうとする粗暴な中国は、そういう意味で局面では危険だったが、それは日本側の捲いた種でもあった。例えば現札幌のミハイロ・ペトロビッチ監督が導入した3バックでは、ピッチを斜めに横断する精度の高いロングフィードを駆使した広範な揺さぶりに特徴があった。

 しかしこの夜の日本は、ほとんどが各駅停車の変化に乏しいパスワークに終始したので、中国側も照準を定めやすく勢い余ったチャージが日本の選手たちを痛める結果となった。特に相手に1メートル以内に寄せられると明らかに動揺が見える佐々木翔は、常にボール奪取可能な相手として狙われていた。指揮官はボランチにふたりともアグレッシブな守備力が売りの橋本拳人と井手口陽介を起用したが、もう少し攻撃的に主導権を握ることを考えても良かった。田中碧や大島僚太ら展開力を持つタイプがピッチの中央にいれば、もっと相手のプレッシャーを軽減し、むしろ効率的に疲弊させる流れが出来たはずである。

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