「欧州の舞台で行けるところまで行きたい」――ブンデス13シーズン目、長谷部誠の矜持

2019年12月05日 田嶋コウスケ

長谷部が明かしたアーセナル攻撃陣を封じたポイントとは?

ブンデスリーガで13年目を戦っている長谷部。そのごく自然にチームを統率する姿は、ドイツ人と何ら変わりがないように見える。 (C) Getty Images

 アーセナルとのヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第5節の試合後、ミックスゾーンに姿を見せたフランクフルトの長谷部誠は、まず最初にドイツ・メディアの取材に応じた。もちろん、質疑応答はすべてドイツ語。質問によっては少し間を置いて考えてから回答するなど、流暢なドイツ語で、ひとつひとつ丁寧に答えていた。

 浦和レッズからヴォルフスブルクに移籍したのは2008年1月。以降、ドイツ一筋で戦い続け、今シーズンでブンデスリーガ在籍13季目となった。メディア対応をドイツ語でこなし、ピッチでも味方に指示を出す──。今や、長谷部の姿はドイツ人と見間違うほどである。

 フィールドでも、35歳のベテランらしく落ち着き払ったプレーを見せた。本職は守備的MFだが、フランクフルトでは3年前の16−17シーズンからCBでの出番が増え、今シーズンにいたっては一貫してCBでプレーしている。アーセナル戦でも3バック中央として先発し、快速FWピエール=エメリク・オーバメヤンとのマッチアップにことごとく勝利した。

 今シーズンのプレミアリーグで3位の10ゴール(14節終了時)を奪っているオーバメヤンと、アーセナル攻撃陣を封じるポイントはどこにあったのか。長谷部は次のように明かした。

「アーセナルは前線に速い選手が揃ってるので、彼らに対して『よーいドン』で走ったら負けてしまう。だから、プレーの先を読んでポジショニングを取るとか、そういう所で勝負しないと勝てないと思っていた。
 
 その点で言えば、個人的にはそんなにやられた感覚はなかった。ただ、アーセナルは6試合勝ちなしで、今日で7試合になったと思うんですけど、対戦していても『良い時のアーセナルではないな』という感じがあった。自分たちとしても、そういうアーセナルとあたれたのは、ラッキーと言えばラッキーだったと思います。
 
(ドルトムントに在籍していた)オーバメヤンとはブンデスの時から対戦している。1点獲られてしまいましたけど、彼は『周りが良くて自分も生きる』タイプ。だからやっていても、なかなか彼の所に良い形でボールが入らなかったりして、苦しみながらやっている感じはありました。ただ、個の力でも打開できる選手なので、脅威は脅威だと感じました」

 フランクフルトの勝利で終わった試合翌日、アーセナルは成績不振を理由にウナイ・エメリ監督を解任した。長谷部の言葉通り、アーセナルのパフォーマンスは低調で、"名門"の名に相応しくない出来だった。

 しかし、長谷部のクレバーな守備があったからこそ、フランクフルトは敵地で勝利を掴むことができた。被カウンター時になると、長谷部はポジションを少し下げてオーバメヤンのスピードに対応。そのガボン代表FWにロングボールが入っても、元日本代表キャプテンは身体を上手くぶつけて、敵の体勢を崩させてからマイボールにした。

 さらに、クロスボールの対応時も、ボールホルダーとマーカーの両方を見られるよう半身で構え、マーカーのオーバメヤンのブロックにいつでも入れるよう適切な距離を取っていた。2ゴールを決めた鎌田大地の活躍が光った試合だが、DFラインを束ねた長谷部の冷静沈着な守備も間違いなく勝利の要因だった。

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