「なぜ日本人はスペイン国旗を振ってスサエタを応援するんだ?」現地の指摘から始まったA・ビルバオとガンバ大阪サポーターの知られざる交流

2019年11月08日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

「ダービーではイクリーニャをアピールしたい」

イクリーニャを手にする北原さん(左端)、村上さん(左から3人目)、福田さん(右端)。写真:福田氏提供

「日本人はバスクとスペインの違いもわからないのか」

 きっかけは、バスク地方のローカルメディア『Athletic-Zurekin』の記事だった。

 9月9日にガンバ大阪と電撃契約を結んだスペイン代表MFマルケル・スサエタが、J1デビュー戦を飾った14日のサガン鳥栖戦は、『DAZN』を通じてスペインでも配信されていた。

 カメラがスペイン国旗を振るG大阪サポーターの姿を抜き、見過ごすことができなかったようだ。

 17の自治州に別れ、それぞれに州政府置かれているスペインのなかでも、バスク州は、歴史的背景からバルセロナのあるカタルーニャ州と並んで独立心が強く、バスク語を話す人も少なくない。

 エイバル出身のスサエタもバスク人であり、バスク最大のクラブであるアスレティック・ビルバオの生え抜き選手だった。「スサエタの応援にスペイン国旗を振るなどナンセンス。そこはイクリーニャ(バスク州の旗)だろう」というわけだ。

 この記事に、あるガンバファンが反応し、「イクリーニャのことは知っているけど、旗を振るにはクラブの許可がいるし、手に入れるまでに時間がかかる」とのコメントを投稿。この一連のやり取りは、サポーターの間で次第に広まっていった。

 そんななか、ビルバオに住む現地の友人からこの一件を聞いたのが、アジアで唯一のA・ビルバオの公式ペーニャ(ファンクラブ)である「ペーニャ アトレティック トキオタラク」の会長を務める村上正己さんだった。

「こんなことになっているけど、何とかならないのか」と相談され、ひと肌脱ぐことに。熱心なガンバサポーターの北原秀一郎さんと連絡を取り、手元にあったイクリーニャを2枚、貸すことにした。
 
 さらに、「セレッソ大阪とのダービーでは、中継を見ているバスクの人たちにイクリーニャが振られていることをアピールしたい」と考えたガンパサポの福田唯人さんから知人を介して相談を受けた村上さんは、ちょうどバスクを訪れていた友人に10枚のイクリーニャの購入を依頼。何とかダービーに間に合わせることができた。

 福田さんは、旗に取り付けるポールなどをホームセンターで買い込み、手作りでフラッグを完成。クラブの許可も取り、ツイッターで"持ち手"を募集すると瞬く間に集まり、ダービー当日には、イクリーニャの旗がスタンドを舞ったのだった。その中には、鳥栖戦でスペイン国旗を振ったサポーターいたという。

 村上さんが北原さんからもうひとつ依頼を受けていたのが、スサエタのチャントの"伝授"だった。
 

次ページスサエタが「感激した」こととは?

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事