「あまりにも不当」「彼は被害者」フランス代表デシャン監督、“不遇の”ジルーへの批判に怒り!本人は今冬の移籍を示唆【現地発】

2019年10月16日 結城麻里

2戦連発でチームを救う

代表38ゴールを決めたジルー。英雄プラティニに3ゴールと迫った。 (C) Getty Images

 トルコがシリアのクルド人地域を空爆したことで、重い空気がのしかかった10月14日のEURO2020予選、フランス対トルコ戦。だがその重石を、オリビエ・ジルーが強烈ヘッドで吹き飛ばした。

 ジルーは今シーズン、所属チームのチェルシーで不遇な日々を送り、プレー時間がほとんど与えられていない。それでも代表に選出されたことで批判が噴出し、「ジルーが無能ぶりを見せれば、今度こそ終わりにしてやる」と豪語するアナリストさえ出る始末だった。

 これに対し、フランス代表のディディエ・デシャン監督は、「フィジカルなコンバ(戦闘)」になると予想された3日前のアイスランド戦(1-0)でジルーを先発に抜擢。その起用に応えて、彼は決勝ゴールを決めてみせた。

 続くトルコ戦では、小さなスペースでもスピーディーにワンタッチでプレーできるウィサム・ベン・ヤーデルを先発させ、ジルーはベンチスタート。だが、スコアレスのまま激闘が続いた72分、デシャン監督はジルーを投入した。

 そしてわずか4分後、アントワーヌ・グリエーズマンのCKを、ジルーが見事にネットに突き刺した。その瞬間、チームメイトたちはこの殊勲者に抱きついて歓喜。試合はトルコに追いつかれて1-1のドローに終わり、フランスの本大会出場決定は11月に持ち越されたが、ジルーは同国歴代2位のミシェル・プラティニの記録(41)まであと3ゴールと迫り、批判の声を結果で黙らせた。

 試合後のミックスゾーンに現われたジルーは、「あのヘッドには、ものすごく気持ちを籠めたんだ」とコメント。「チームも一歩前進した。(EURO出場まで)あと2ポイントのみ。11月に仕事を終えないとね。ディテールとセットプレーの守備を、もっと調整して詰めないといけない」と語った。

 さらに、チェルシーでの立場について聞かれると、「監督たちも試合を観ていると思う。チェルシーに大いに胸を張って戻れるね」と笑わせた。

 チェルシーを去るかどうかの問いには、「必ずしも去りたいわけじゃない。でもチェルシーでのいまの状況に満足することはできない」と語り、今冬の移籍にも含みを持たせた。

「33歳だけど、まだ足もちゃんとしているし、生活衛生面(食生活や睡眠などの規則正しい生活)も良好だから、まだ何年かプレーできると思っている。チェルシーでもっと試合に出場してプレーを楽しみたいし、それが僕のプライオリティーだ。でも、もし選択を強いられるようなら、僕も決断することになると思う」
 

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