「もっと死に物狂いにやろうや」長崎の隊長・角田誠が示す覚悟と献身性に、ドラマの予感は十分だ!

2019年10月08日 藤原裕久

プレーオフ出場圏との勝点差は4。逆転昇格の可能性も十分にある長崎のキーマン

長崎で最終ラインを司る角田。メンタル面での鍵を握る選手だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 35節終了時で、J1昇格プレーオフ出場圏となる6位との勝点差は4にまで迫った。残る7試合の結果次第では、逆転でのJ1昇格も十分にある状況だ。その長崎にあって、終盤戦でメンタル面のキーとなりそうな存在が角田誠だ。

「去年の長崎を見た時に、ピンチの時に吠えるような選手がいないと思った。すぐに角田だなと思ったよ」

 角田獲得の意図を手倉森監督はそう説明する。昇格や優勝をするチームにはキャプテンやエースとは別に「影のリーダー」と言うべき存在が必ずいるのだという。「俺のやり方を知っていて、俺も知っている。J1の経験もある」という角田はまさに適任だった。

 角田は期待どおりチームを支える存在だった。トレーニングでは率先してムードを盛り上げ、ピッチ上ではDFの中軸を担い、ボランチ陣に故障者が相次いだ5月にはボランチとしてもプレー。角田が見せる巧みな駆け引きと判断、そしてシンプルながらも状況に合わせたプレーは、多くの関係者を唸らせた。

「サッカーって相手がいるスポーツやから、相手の逆を取るか、相手のいないところでプレーする。相手を見てポジションを取ればボールは回るし、前にスペースがあるなら前に行くし、ないなら下がる。そういうことやから」

 そう語る角田のサッカー観は、手倉森監督の目指す『ボールも人も動かすスタイル』とも重なる部分が多い。それだけにスタイルが浸透しきれないまま苦戦するチームへのもどかしさも人一倍で、時にはコーチ陣に「練習からもっと厳しさを出していってもいい!」と直言することもあった。その怒りの根底にあったのがプロサッカー選手としての自負だ。
 
「こんな仕事が他にありますか? いい大人が大喜びしたり、悔しかったり、泣いたりするんですよ。すごいことやらせてもらってんですよ。もっと死に物狂いにやろうやって」

 この自負があったからこそ、角田は必死だった。だがCBに比べてプレーエリアが格段に増えるボランチを、急きょ4年ぶりにプレーした代償は、今年36歳を迎えた角田にとって大きなものだった。疲労が蓄積し筋肉が悲鳴をあげるなか、試合を欠場することも増える。それでも大事な試合の時には、ギリギリの状態までコンディションを整えて出場して戦った。気付けばサポーターは角田を「隊長」と呼ぶようになり、誰もがリーダーと認める存在となっていた。
 

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