【J1コラム】大混戦の優勝争いに見る「戦国Jリーグ」の現在地とは――

2014年12月08日 加部 究

プレミア移行前のイングランドに状況が似ているJリーグ。

G大阪が見事な逆転優勝を果たしたとはいえ、シーズン最終節の争いには締まりがなかったのは事実だろう。(C) SOCCER DIGEST

 間違いなく裾野の広がりは実感する。
 
 J1からJ2まで紙一重の力を持つクラブが、着実に日本列島に浸透している。
 
 2部から昇格したG大阪が三冠を達成すれば、おそらく後にも先にも世界に例を見ない快挙となるだろう。イングランドでもドイツでも2部から昇格してトップリーグを制した例はあるが、さすがに三冠まではない。
 
 ただしJ2降格がV字回復の契機になるケースは、もはや珍しくなくなっている。信頼できる監督を招き、降格しても継続して指揮を託し、昇格して進化を証明する。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が指揮した広島が復帰1年目にACL出場権を獲得したのを皮切りに、ネルシーニョ監督の柏が昇格1年目でJ1を制し、今年は長谷川健太監督が指揮するG大阪が続いた。
 
 逆に昨年4位で明らかに上昇機運にあったC大阪や、昨年途中までは首位を快走した大宮が降格した。優勝を争うチームでも、ほんの少し歯車が狂うだけで一転降格の危機に直面する。安定した力を持つリーダーが不在で、戦国時代が長引く。
 
 この状況は、前世紀のプレミア移行前のイングランドに似ている。カップ戦では、ジャイアント・キリングが頻発し、時には昇格クラブがトップリーグを制覇する。もっとも当時からイングランドは欧州の舞台でも競争力を発揮し、例えば1977-78年シーズン、昇格1年目で1部リーグを制したブライアン・クラフ率いるノッティンガム・フォレストは、翌78-79年からは欧州チャンピオンズカップ(当時)を連覇している。ちなみにイングランド勢は、ノッティンガムの連覇を挟み、前後でリバプールが、さらにはアストン・ビラもタイトルを奪取しており、計6シーズン連続で欧州制覇を達成した。必ずしも国内が戦国模様だと、国際舞台では勝てないわけではないのだ。
 
 当時の欧州シーンと、現在のアジアの状況を比較して、大きく異なるのは外国人枠である。欧州制覇したイングランドの3チームは、すべて英国圏の選手たちで固めていた。一方ACLでJクラブが苦戦を強いられている中国、韓国や中東のクラブは、それぞれが質の高い助っ人を抱えている。また戦国模様のJリーグとは対照的に、国内リーグでの負荷が少ない。そういう意味で、ACLでの低迷が続くから、Jリーグの質が低下していると結論づけるのも短絡かもしれない。
 
 確かに今年のJ1の優勝争いは締まりがなかった。最終節に首位のG大阪が最下位の徳島と引き分け、2位で追いかける浦和は名古屋に逆転負けを喫し、3位の鹿島もホームで鳥栖に敗れた。終盤になると、残留争いを続けるクラブと、優勝戦線に留まるクラブの力関係が逆転し、波乱が連鎖するのが最近のJリーグの定番になりつつある。シーズンを通して安定して戦えるチームがない。今年もG大阪は、5月の時点で16位と降格圏で低迷しており、首位の浦和とは最大で勝点「14」の差があった。逆に浦和は、終盤に優勝がちらつき始めるとともに、勝点が動かなくなってしまった。

次ページ裾野が広がったJで、次に待たれるのは頂点を引き上げる牽引車。

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