監督交代に揺れる名古屋はどう変わるのか?フィッカデンティ新監督が初練習で示したスタイル

2019年09月24日 今井雄一朗

180度の方針転換というよりは…

名古屋での初練習に臨んだフィッカデンティ監督。選手たちと意見を交わしながら指揮を執った。写真:今井雄一朗

 180度の方針転換というよりは、手法の変更に見えた。9月23日、風間八宏前監督の契約解除とフィッカデンティ監督の新監督就任を発表した名古屋は、早速その日の午後から初練習を敢行。本来ならば連休だったところに急遽用意された新指揮官のお披露目の場では、超攻撃的から超守備的へのドラスティックな改革という周囲の予想をよそに、整理整頓の行き届いた意欲的なトレーニングが展開された。
 
 攻撃か守備かではなく、自由気ままか規律正しくか、という差が前体制との色合いの違いに思えた。フィッカデンティ監督は「今日は全体でどの高さでボールを奪いに行けているかに連動して、DFラインの高さが決まるということを一つのチームコンセプトとして確認する作業をしたかった」と狙いを語っている。ただ、やはり守備の練習からなのかと、このトレーニングの意図を汲み取ればそれは間違いである。
 
 監督が言わんとするのはプレッシングに行くのが基本線であり、それが上手くできなかった時に何をすべきかを選手に説いた。「DFに何もさせないプレスができていないなら、まず背後のスペースを埋めよう」
 
 その後、基本的なシチュエーションごとの守備の配置を確認すると、「ランゲラックとも相談したんだが、GKにまでプレスが来るとき、簡単にロングボールを入れることもするぞ。優先順位はつなぐことにあるが、リスクは選ばない」と守護神との調整をもとにした選択肢を提示し、「その時はFWの一人は競って、一人は裏を狙おう」と単なるクリアに終わらせないチームとしての挙動を徹底して整理していた。ケースバイケース、こういう時はこう、という判断基準を明確にして、「この順位もあってメンタルが少し落ちている」という部分にも働きかけようという狙いは明らかだった。
 
 キーワードはいくつも提示されたが、最も印象的だったのは「攻めるも守るもすべて、どの瞬間にも連動している状況でプレーするというチームをしっかり用意する」というものだ。これはつまり就任の際のコメントにもあり、名古屋が過去2年半でもコンセプトに掲げてきた「攻守一体の攻撃サッカー」に通ずるものだと言えるだろう。
 
 上記の指導のほかにもこの日、フィッカデンティ監督から選手たちに明示されたチームの動き方のテストケースはいくつもあった。「あまり詰め込みすぎないようにはする」と語った指揮官だったが、一方で練習中には「こういうことを毎日増やしていこう」とも呼び掛けており、連動して戦うための細かい基準は今後も付け足し続けられることは間違いない。
 

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