苦境に喘ぐジェフを救うために――佐藤勇人が示す覚悟と献身ぶり

2019年09月19日 赤沼圭子

水戸戦では7試合ぶりの勝利を手繰り寄せる

ここ3試合はスタメン出場し、チームを引っ張る佐藤。水戸戦では勝利に貢献した。(C)SOCCER DIGEST

 千葉の今季初の逆転勝利を告げる笛の音がフクアリに響くと、佐藤勇人はその場に崩れ落ちるように膝をついた。
 
 J2の32節で水戸と対戦した千葉は2-1で勝利。白星は25節の琉球戦以来で、ホームのフクアリでの勝点3獲得は23節の福岡戦以来だ。勝ち切った達成感と歓喜に感極まってうずくまった男を、後ろから抱きかかえるようにして立ち上がらせたのは、彼の双子の弟の佐藤寿人だった。
 
 J2でチームワーストタイの4連敗で迎えた30節の町田戦で、21節の徳島戦以来のスタメン出場を果たした佐藤は、試合前のロッカールームやウォーミングアップ時にチームメイトに向かって、そして自分にも言い聞かせるようにこう言った。
 
「プレッシャーを感じられるのもプロのスポーツ選手、サッカー選手ということだから、最後はもう楽しんでやれるくらいの気持ちでやろう」
 
 それまで試合をピッチの外から見ていて感じるものがあった。
 
「勝たなくちゃいけない。でも、勝てていない。連敗している。みんながすごくプレッシャーを感じていると思った。このタイミングで自分にチャンスが来て、自分の役割はハッキリしている。正直、自分はピッチでできることは限られている部分があるけど、ピッチ外のところ、みんなの顔を見ながらというところの役割は自分にある。プレッシャーを感じるのはそれこそ自分でいいし、他の選手には持っている良いものを出してほしいと思うから、自分はみんなの分を背負うつもりでやっていた」
 
 メンタル面をカバーするだけではない。30節・町田戦の後半、佐藤は中盤に生まれるスペースに意図的にポジションをとった。一度攻めたら終わりがちな千葉の攻撃に連続性を持たせるため、相手のクリアなどセカンドボールを拾い、相手陣内でサッカーをすることでリズムを作ろうとしたのだ。
 
 

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