「謝罪せよ!」「3年目は成功する」パリSG残留決定も“ネイマール論争”に終息はない!【現地発】

2019年09月04日 結城麻里

ネイマールの残留はパリSGにとって良き結論だったのか

バルサとの交渉が報じられながら今夏の移籍は叶わず、パリSG残留が決まったネイマール。世界は固唾を飲んでその動向を見守った。 (C) Getty Images

「失望だよ! 3か月も振り回されて! 裏切り者だ!」

 この夏のメルカート(移籍市場)閉幕から一夜明けた9月3日の朝、パリ郊外のカフェでは、筋金入りのパリSGサポーターでもある経営者のカリムが憤怒していた。

「そもそもネイマールが来てもう2年になるが、俺たちはまだアイツにチャントのひとつも作ってやっていないんだ。チャントをもらっていないのはアイツだけさ。たぶんこれからも作らないね。タレントに申し分はないが、人間としては嫌いだからな!」

 ネイマールが今夏にパリSGを退団しようとしたのは周知の事実だ。そのためか、カフェに座っていたマルセイユ・サポーターの客が、「ネイマールは拾ってくれるクラブが見つからず、"べ・ン・チ"に戻る決意をしました。あっはっは(笑)!」と横やりを入れた。なんとも皮肉なやり取りである。

 フランスの権威ある全国紙『L’EQUIPE』が「SE QUEDA」と残留を意味するスペイン語を一面の大見出しに掲げ、ネイマールの移籍破談をスクープしたのは、メルカートがクローズする前日のこと。それ以降、フランス中が「どっちらけ」になった。「たったひとりのワガママに世界中が振り回された」といううんざり感に襲われたからだ。

 その翌日には同じく『L’EQUIPE』が、計4ページに渡る詳細なドキュメントを掲載し、およそ3か月の移籍騒動を振り返った。
 

 そこには、移籍交渉が滞った8月末頃に苛立ったネイマールがトレーニング中に若いチームメイトにつっかかったという、これまでに明かされていなかったエピソードも綴られ、人びとのフラストレーションを増大させた。

 ほかにも、今夏にスポーツディレクターとなったレオナルドが着任後初めてロッカールームを訪れた際に、「私はフランス語で話す。分からない者はフランス語の勉強をするのみだ」とネイマールを冷たく突き放し、本人が愕然としたというエピソードも紹介されている。

 もっとも、「タレント力は申し分ない」という点では、フランス中が一致している。多くのジャーナリストや専門家は8月初旬から「ネイマールを失えばパリSGは大変なことになる」と指摘していた。

 移籍の裏事情に詳しいジル・ファバール氏は、「これはポーカーゲーム。バルサが本気で獲ろうとしているかも、パリが本気で売ろうとしているかも疑問だ。そもそも怪我人続出のパリを見れば、ネイマールなしでどうやって戦うのか、大いに不安だ!」と訴えた。

 また、『L’EQUIPE』の看板記者ヴァンサン・デュリュック氏も、「2億2000万ユーロ(約275億円)も払って獲得した選手がここで出て行けば、面子を失うのはパリSGで、大失敗ということになる。才能に疑問はなく、本人も、残留すれば切り替えて3年目を成功させるだろう」と強調した。

 ただ、ピッチ外での振る舞いに対する評価は、まるで異なっている。

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