「山形じゃなかったら…」。クラブ最古参・山田拓巳が語る“モンテディオ愛”

2019年07月26日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

このままでは契約を切られる。そこで見守ってくれたのが…

山形でのキャリアについて赤裸々に語ってくれた山田。写真:徳原隆元

 正直、若い時は移籍も考えた。モンテディオ山形より規模的に大きいクラブで活躍したいと、山田拓巳はそんな目標を立てていたのだ。しかし、突きつけられたのは厳しい現実だった。
 
「自分の力不足で試合に出られない時期が続いて……。なかなか上手くいきませんでした」
 
 高卒とはいえ、1~2年目で目に見える結果を残せず、このままでは契約を切られると不安が膨らむ一方だった。だが、そんな山田を辛抱強く見守ってくれた人がいた。当時クラブのGM(ゼネラルマネジャー)だった中井川茂敏である。山田は若かりし頃の自分を思い出しながら次のように語った。
 
「中井川さんが中心になってというか、試合に絡めない僕をそれでも長い目で見てくれました。そのおかげで、6年目(13年シーズン)ぐらいからコンスタントに出場できるようになりました。山形じゃなかったら、こうして今もサッカーをやれていたか分からない。山形に来ることができて本当に良かったです」
 
 気付けば今年で在籍12年目。山田はいつしかクラブの最古参にしてシンボル的存在になっていた。「こんなに長くいるとは思わなかった」と笑顔を見せる彼の心にはしっかりと"モンテディオ愛"が刻まれている。その愛するクラブを再びJ1リーグの舞台に復帰させることが、チームキャプテンの使命でもあるだろう。
 
「現役でいる間にJ1に戻りたい。今年はビッグチャンス。ここを逃がしたら次はないぐらいの意気込みで戦いたいです」
 
 J1復帰へのポイントのひとつが、夏場の戦いをどう乗り切るかだ。近年は7~8月に失速し、そのまま上位に浮上できないまま中位に甘んじている。だから、山田は「ここで勢いに乗れれば」と語気を強める。
 
「(フィジカルコーチの)エルシオのおかげでチームは鍛えられていて、例年以上にみんなのコンディションは良い。夏場の戦いを乗り切るには戦術どうこうではなく、フィジカルや気持ちの強さが必要です」
 
 ひと言で表現するなら、「粘り強さ」。後半戦のキーファクターは、これに尽きると山田はいう。
 
「このクラブには文字通りのスター選手がいるわけではありません。だから、チームとして粘り強く戦うことが大事です。それが山形のチームカラーでもあると思うんです。山形で過去にJ1昇格を経験した時も団結力や粘り強さがあった。今年のチームは"良い時のモンテディオ"に近づいているような気がします。雰囲気もいいし、なにより粘り強い。ここまで首位戦線に絡めているのは僅差のゲームをモノにできているからだと思います」
 

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