懐疑論者を黙らせた久保建英のデビュー戦。それでも「新シーズンはBチーム」と予想する根拠と懸念

2019年07月22日 吉田治良

後半の45分間、久保はマドリーの攻撃の中核を担い続けた

バイエルン戦でピッチに立った久保。なによりも驚かされたのは、その強靭なメンタリティーだった。(C)Getty Images

 あながち過剰な報道でも、誇大な表現でもなかったということだろう。
 
 レアル・マドリーのトップチームに帯同し、北米遠征に旅立って以降の久保建英にまつわる報道は、個人的には常軌を逸しているように思えた。練習中の目を引くワンプレーを切り取って、チームメイトや関係者の好意的なコメントをつなぎ合わせて、この18歳になったばかりの若者を、実像以上に大きく見せようという魂胆が見え隠れしていたからだ。

 けれど現地時間7月20日、アメリカのヒューストンでマドリーの一員として実戦デビュー(対バイエルン・ミュンヘン戦)を飾った久保のパフォーマンスには、私を含めた懐疑論者を黙らせるだけの十分な説得力があった。
 
 ことボールタッチの技術、前を向くターンの鋭さは、後半にピッチに立ったセカンドチームの11人の中でも際立っていただろう。むしろ、すでに昨シーズンにトップデビューを飾ったヴィニシウス・ジュニオールの技術が、久保との比較で拙く見えたほどだ。
 

 プレッシャーを掛けられても簡単にボールをロストしないから、チームメイトも安心して久保にパスを預けた。北米遠征がスタートしてからのおよそ2週間で勝ち取った、信頼の証だろう。後半の45分間、久保はマドリーの攻撃の中核を担い続けた。
 
 62分にヴィニシウスに通したスルーパスなど、随所にそのフットボール・センスを垣間見せた久保。なによりも驚かされたのは、その強靭なメンタリティーだ。チームメイトに指示を飛ばし、味方のシュートミスをオーバーアクションで悔しがり、レフェリーに壁の位置の修正を要請するその立ち居振る舞いからは、世界的なビッグクラブの一員としてデビューを飾ることへのプレッシャーなど、微塵も伝わってこなかった。過緊張から視野狭窄を起こすこともなく、まるで味スタのピッチに立っているかのように落ち着き払っていた。
 
 4-3-3(あるいは4-1-4-1)のインサイドハーフとしての可能性を示したことも、今後に大きな意味を持つだろう。新戦力のエデン・アザールを含め、ややタレントが過剰気味の3トップの両サイドだけでなく、インサイドハーフでも使えるとなれば、それだけチャンスは広がるのだ。
 

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