リアル“南葛SC”安田晃大キャプテンが語る胸の内「このチームと一緒にJリーグへ戻る!」

2019年07月24日 伊藤 亮

「一番自分のことをほしい、と言ってくれたのが南葛SCだった」

今季からキャプテンとして南葛SCを引っ張る安田。インタビューは、クラブが懇意にするイタリアンレストラン『アヴェーレ』で行なった。壁一面に高橋先生直筆の『キャプテン翼』のキャラクターがずらり。写真:徳原隆元

 漫画『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一氏が代表を務めるリアル"南葛SC"の東京都リーグ1部での戦いは、勝負の夏場を迎えている。9戦を終えた時点で、4勝3分2敗の勝点15(7月17日時点)。上位争いは激しさを増している。チームは福西崇史監督が掲げる「繋ぐサッカー」への挑戦を続けつつ勝利を目指し奮闘している。
 
 昨シーズンからチームに加わり、リーグ戦の優勝の喜びと関東リーグ昇格プレーオフでの悔しさを味わい、今シーズンはキャプテンとしてチームの顔となった選手がいる。安田晃大。Jリーグでも活躍した彼が、なぜ南葛SCにやってきたのか。そしてチームのために何を考え、動いているのか。
 
 その言葉には、これまでの経験に裏打ちされたプロとしての矜持と責任感、そして覚悟が滲んでいた。
 
 今回の特集では3回にわたり、南葛SCの中心選手である「キャプテン安田」のサッカー哲学に迫る。第1回では、南葛SC移籍決定に至るまでの葛藤と移籍後にあった新たな発見について語ってもらった。
 
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 東京都・葛飾区をホームとする南葛SCは現在、東京都社会人サッカーリーグ1部に所属している。J1から数えればJ7。目指すべき頂までの道のりはまだ長い。そんなチームに2018年、強力な選手が加入した。前年のシーズンまでJ2・愛媛FCの背番号10を背負っていた安田晃大だ。名門・ガンバ大阪の下部組織で育ち、U-15、16、17、18、20と年代別の日本代表にも選ばれてきた、華やかな経歴を誇るプレーヤーだ。
 
 移籍当時は28歳。J2からJ7へ。サポーターからすればこの上なく心強い選手の加入に諸手を挙げて大喜びだ。しかし、選手として脂の乗り切ったタイミングに差し掛かった本人にしてみれば、簡単な決断ではなかったことは容易に想像がつく。
 
「愛媛でのシーズンが終わり、契約満了になって次のチームを探していた時、早い段階で話をいただいたのが南葛SCでした。代理人に聞かれて最初に、『<キャプテン翼>に出てくる、あの南葛SCですか?』と聞きましたね(笑)。でも、カテゴリを聞いたら東京都2部だという。当時は正直、もっとJリーグでプレーしたかったですし、まだ行けないです、と一度は答えたんです。2017年末の話ですね」
 
 しかし、年が明けて2018年になってもなかなか新たな所属先が決まらなかった。
 
「もう少しカテゴリや条件も落として探したものの、納得がいく話がなくて。海外にも目を広げてみて、アジア圏でも探して、インドネシアのクラブの練習に参加したこともあります。それでも『ここでは俺、がんばれへんな』と感じてしまい。それで帰国したら、南葛SCからもう一度話が来たんです」
 
 プロになって初めて所属先が決まらなかったこの約3か月間。この時期が「人生で一番悩んだ、どん底の時期でした」と振り返る。
 
「一瞬、サッカーやめようかな、とも思いました。でも自分にはサッカーしかない、と思い直して。この時に考えたんです。自分の中で何が最も重要か、を。結論は、自分のことを一プレーヤーとして必要としてくれているチームに行くべきなんじゃないか、ということです。カテゴリは関係なく、プロとして、求められているところに行く。そうすれば、やらなければいけない厳しい状況下に身を置くことになり、やりがいを見つけられるので。それで南葛SCの話を改めて聞いた時、『キャプテン翼』作者の高橋陽一先生が後援会長(当時)として関わっていて、東京都1部に昇格して本気でJリーグ入りを目指していると。だから力を貸してほしいと言われて。他のいろんなチームとも話をしましたけど、一番自分のことをほしい、と言ってくれたのが南葛SCだったんです」
 

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