なぜ、ユベントスはサッリを招聘したのか? カギとなったのはクラブカルチャーの「革命」

2019年07月10日 片野道郎

アッレーグリは事実上の解任だった

ユベントス新監督に就任したサッリ。(C)Getty Images

 ユベントスの監督人事は、現実的な選択肢の中だとマウリツィオ・サッリ(前チェルシー指揮官)が最も妥当な落としどころと言えるだろう。しかし個人的には、そもそもマッシミリアーノ・アッレーグリ解任が正しかったかどうか自体が疑問だ。

 在任5年でセリエA5連覇、コッパ・イタリア優勝4回、CL決勝進出二回という結果を残したアッレーグリの退任が、事実上の解任だったことは周知の事実。その背景には、新シーズンの強化戦略、さらには基盤となるサッカー観そのものについてまで、強化責任者のファビオ・パラティチ、そしてとりわけパベル・ネドベド副会長との間に溝が生じていたという事情があった。

 ユーベらしくなかったのは、アッレーグリを切った時点でまだ次期監督人事について明確なビジョンが固まっていなかったこと。後任候補として挙がった名前を見ても、サッリ、ジョゼップ・グアルディオラ(マンC)、ジョゼ・モウリーニョ(元マンU)、ディディエ・デシャン(フランス代表)、レオナルド・ジャルディム(モナコ)、シモーネ・インザーギ(ラツィオ)、シニシャ・ミハイロビッチ(ボローニャ)など、どの観点から見ても一貫性に欠けるリストだった。

 いまパラティチとネドベドが思い描いているのは、どんな相手に対してもボール支配で主導権を握り、攻撃的でスペクタクルなサッカーを見せて勝つチームだ。

 元々ユーベは、例えばバルセロナのように明確な戦術的アイデンティティーを掲げるよりも、何よりも結果を重視してスター選手ですらハードワークを厭わず泥臭く勝つという文化が支配的だった。その点から見ればアッレーグリは、クラブの旧来のカルチャーにはぴったりの監督だった。

 しかし、そのアッレーグリを切った事実は、「よりスペクタクルで世界中のファンにアピールする攻撃的なスタイルを打ち出すべき時期がきた」と首脳陣が考えている証だろう。アンドレア・アニェッリ会長の「夢」がグアルディオラの招聘だというのも、まさにそれゆえだ。

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