「3分間スピーチで森保君は20分も話していた」恩師・今西和男氏が語る日本代表監督の人物像と資質

2019年06月24日 小須田泰二

「集中力の高さというのは、高校生の森保君を初めて見たときから、一番評価していました」

日本代表を率いる森保監督。今西氏は、その集中力の高さを絶賛する。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 日本代表は6月25日(日本時間)、コパ・アメリカのグループリーグ突破をかけてエクアドルと対戦する。チームを率いるのは、就任して1年を迎えようとしている森保一監督。その指揮官をサンフレッチェ広島時代からよく知る恩師、今西和男氏に森保監督の人となりについて伺った。

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――森保一監督が日本代表に就任して1年が経とうしています。サンフレッチェ広島時代の教え子でもあります、森保監督が代表監督に就任したときの心境はいかがでしたか。
「日本人を代表監督にするんだったら、風間八宏(現・名古屋グランパス監督)君か森保君かなというふうには思っていました。松田浩(元・栃木SC監督)君がひょっとしたら将来、代表監督になるかなと思ったら、森保君のほうが先になりましたね。ずっと見ていた選手ですからとても感慨深いですよ」
 
――森保監督としての資質についてどんな印象をお持ちでしょうか。
「彼の良いところはとても賢い。いわゆる監督と言ったら、とくに選手に対して『こら!』と言えるところがないといけない、というイメージを持っている人が多い。ところが、彼はそうじゃない。『こうするぞ』という方針はしっかり伝えたとしても、普段は選手の話をいろいろ聞いてあげたり、コーチとも相談しながらやっている。日本代表コーチの横内(昭展)君も下田(崇)君も私の教え子ですけど、『君たちが指導者にしろ、マネジャーにしろ、本気でサッカーで飯を食いたいんだったら、ちゃんと自分の意見を聞いてもらえるようにしないといけない』と言って、彼らのためによく勉強会を開いていました」
 
――勉強会の内容は具体的にどういったものでしょうか。
「例えば、"3分間スピーチ"というものがあったんですが、『今日の講義を聞いた中で一番印象に残ったことを、3分間話してください』と言ってやらせたら、ほとんどが1分ぐらいで終わってしまう。ところが、森保君は20分間も話していた。『森保、もう3分過ぎてるぞ』と言っても止まらない。昔からすごく集中力があって。多感性というかね、感じるものがたくさんあって、それを生かしたいという気持ちがあるんですよ。集中力の高さというのは、高校生の森保君を初めて見た時から、一番評価していました」
 
――森保ジャパン発足当初、長友佑都選手は「森保さんのためだったら何でもやりたい」と言っていたそうです。ロシア・ワールドカップでコーチとして森保さんは現場に立っていましたが、そこで長友選手はその人間性に触れたのでしょう。
「自分の意見をとにかく聞いてくれることは、選手にとって大事なことですよ。監督に対する信頼度からしたら、やっぱりそれが一番でしょう。選手が終わった後、サッカーの現場で指導者になるために何が必要か。そのことを、ずっと森保君たちに教えてきたつもりです。『聞く、考える、話す』。とくに、このことをずっと教えてきたのですが、選手にしてみれば、たしかに『俺の言う通りにやれ!』というのではなく、選手をその気にさせることは非常に大切だと思います。時代もそんな流れになっている。俺について来いという時代ではなく、今は選手たちの意見を聞く時代へ。みんなで決めたことは守ろう。きちんと規律を守りながら、自分の考えていることを理解してもらうために監督と対話する。反対に、指導者は選手の話も聞くという時代に、サッカー界は変わりつつある。そういう意味でも、森保君は今の時代に合った指導者とも言えるでしょう」
 

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