チリ戦は完敗だったのか? 攻撃のタクトを託された久保、ポスト大迫の有力候補に浮上した上田… 五輪世代が示した可能性

2019年06月18日 加部 究

東京五輪を考えれば上田を獲得した鹿島は、一刻も早くJリーグで使ってほしい

東京五輪世代の上田綺世(左)、久保建英(中央)、大迫敬介(右)。将来への可能性を示してみせた。(C) Getty Images

 20年前のコパ・アメリカで、日本は開催国のパラグアイに0-4で完敗した。そして今回の3連覇を狙うチリ戦もスコアは同じだったが、細部を辿れば確かに20年間の進化の跡も見て取れた。20年前は文字通りの完敗だったが、今回は決定機を4度、それに近いチャンスも2度築いた。

 チームでも個でも経験値ではるかに上回るチリが合宿を組んで万全の準備を施して来たことを思えば、ベストの日本が中立地で挑めば勝算も見込める可能性を示したゲームとも言える。
 
 
 特に孤立しがちなワントップで5度もチリゴールに肉薄した上田綺世は、途中で自身に代わって登場して来た岡崎慎司を超えていく可能性を見せた。ボックス内では圧倒的に数的不利ながら、際立った駆け引きでフリーになり、ピンポイントでの可能性を探り続ける。

 本来大学リーグでプレーする選手が、日常とは異次元のプレッシャーの中でチャンスの芽を生み出していくのは奇跡に近い。惜しくも決め切ることは出来なかったが、どれも簡単な形ではなく、東京五輪を考えれば、獲得を決めている鹿島は一刻も早くJリーグで使ってほしい素材。ポスト大迫勇也の有力候補に浮上したと見ていい。
 
 一方その上田に2度の決定的なスルーパスを通した柴崎岳も、主将らしくチームに貢献した。とりわけ守備から攻撃に移行した際に、最前線での一瞬の隙を見つけ、そこに正確なパスを供給する能力は抜けている。前半終了間際に一度、さらに57分にも、ビダルからインターセプトすると即座にファーサイドへ逃げる上田にピンポイントクロスを提供した。またアディショナルタイムにも、右サイドからペナルティエリア左の安部裕葵の足もとにロングパスを通し、ファーストタッチで見事にDFを外した安部が、そこで狙っていれば絶好機になっていた(結果はさらに切り込み逸機)。またポゼッションで上回るチリは、しっかりとパスを繋ぎながらサイドから攻略を図ったが、的確な読みで再三最後の防波堤の役割を果たした。
 

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