吉兆が見えたマンU、堂々たるチェルシー プレミアの大一番を読み解く

2014年10月27日 田嶋コウスケ

互いの持ち味が出た好ゲームに。

1-1の引き分けに終わったビッグマッチから何が見えたのか――。 (C) Getty Images

 ルイス・ファン・ハールとジョゼ・モウリーニョの師弟対決は、1-1の引き分けに終わった。
 
 両指揮官にとって、このオールド・トラフォードでの一戦は感慨深かったに違いない。両者の出会いは1997年、バルセロナがその場所だった。
 
 スポルティング・リスボン、ポルト、バルセロナで通訳としてキャリアをスタートさせたモウリーニョは、仕えていたボビー・ロブソン監督がクラブを去った後もバルセロナに残り、その後任に就いたファン・ハールの下でアシスタントコーチに指名された。当時は主に試合分析を担当し、ファン・ハールの自宅に毎週足を運び、戦略を共に練っていたという。
 
「ルイス(ファン・ハール)から多くを学んだ。そこから自分の考えを発展させたが、彼がいなかったら私はこの場所にいない」
 モウリーニョがそう言って敬意を表せば、ファン・ハールは、
「ジョゼ(モウリーニョ)のチームを見ていると、私のそれとよく似ているのが分かる」
 と語り、愛弟子の戦術に自分のカラーが見え隠れしていることを素直に認める。
 
 そんな両者が対戦相手として顔を合わせるのは、2009-10シーズンのチャンピオンズ・リーグ決勝以来。モウリーニョが指揮するインテルが、ファン・ハール率いるバイエルンを2-0で下して欧州の頂点に立ってから4年ぶりに実現した通算二度目の直接対決は、プレミアリーグ首位を走るチェルシーのモウリーニョに、なかなか軌道に乗れないマンチェスター・ユナイテッドのファン・ハールが挑むという構図だった。
 
 そんな師弟対決は、両チームの持ち味が出た好ゲームになった。
 
 互角だった序盤の攻防から、徐々にユナイテッドがリズムを手繰り寄せ、決定機を作る。ボールを奪ったら縦に素早く展開し、失点がリーグで2番目に少ないチェルシーの堅守が整う前に攻め切り、チャンスを生み出した。
 
 象徴的だったのが、23分の場面。自陣でボールを奪うと時間も手数もかけずに前へ。アドナン・ヤヌザイが前線へスルーパスを入れると、DFラインの背後に飛び出したロビン・ファン・ペルシがダイレクトで惜しいシュートを放った。
 
 だが、チェルシーは動じない。ユナイテッドの攻勢を押し返し、後半に入ると首位の貫禄を見せる。
 
 53分だ。セスク・ファブレガスの左CKに、ニアに走り込んだディディエ・ドログバがヘッドで合わせ、鮮やかな先制ゴールが突き刺さした。
 
 リードを奪ったチェルシーは、隙がなかった。ボールを持つとピッチ幅を十分に広く使ってキープ。ユナイテッドがボールを持てば、中盤からパスコースを塞いでチャンスを与えない。ボール奪取に長けるセントラルMFのネマニャ・マティッチを中心にバランスの取れたサッカーで試合を支配し、ブルーズ(チェルシーの愛称)の勝利は間違いないように映った。
 
 ところが、後半ロスタイムに試合が動く。
 
 サイドを幾度となく突破していたアンヘル・ディ・マリアが、ブラニスラフ・イバノビッチに倒される。イバノビッチは2枚目のイエローで退場に。このFKから、マルアン・フェライニがヘディングシュート。ここまで何度かファインセーブを見せていたティボー・クルトワがこれも弾くが、こぼれ球がファン・ペルシの足下へ――。エースが豪快に蹴り込んだ同点弾で、ユナイテッドは土壇場でドローに持ち込んだのだった。

次ページユナイテッドはようやく歯車が噛み合い始めた。

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