日本代表スタッフ 藤田俊哉氏に訊く――久保建英のA代表選出とアヤックスの復活劇に共通する“強化スタンス”

2019年06月01日 サッカーダイジェストWeb編集部

「久保のA代表入りは、彼が自分の力で勝ち取ったものだと言える」

日本代表に初選出された久保とアヤックスの快進撃を牽引したデ・リフト。ともに10代ながら、チームの主軸に成長した。(C) SOCCER DIGEST/Getty Images

 オランダ・フェンロでコーチとして活躍したのち、本場・イングランドのリーズ・ユナイテッドの強化スタッフ入り。現役引退後、欧州クラブの監督を目指し、活躍の場を海外に移した藤田俊哉氏は、長年培った海外でのキャリアを活かすべく、昨年9月から「欧州駐在強化部員」という日本協会の新ポストに就任した。"世界の目"を持つ日本代表のキーマンに直撃する月一連載インタビュー。今回は、久保建英選出に見るA代表強化の方向性などについて話を伺った。
 
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――5月23日、キリンチャレンジカップに挑む日本代表のメンバーが発表されました。大迫敬介選手、中山雄太選手といった若手の選出が目立つなか、とりわけ17歳の久保建英選手の招集に注目が集まっています。彼の場合、U-20日本代表ではなくA代表に選ばれるというのは自然な流れなのでしょうか。
 
「とてもいい流れだと思う。年齢的にも、決して早すぎるということはない。世界のスタンダードを見ても、10代で活躍している選手はたくさんいるから。ベンフィカのジョアン・フェリックスだって19歳だし、アヤックスのデ・リフトなんて19歳でチームキャプテンを務めている。サッカーは競争社会。早すぎてダメなんてことはないよ。それくらいの年齢の選手が活躍するのは、世界的に見ても珍しいことではない。
 
 もちろん久保の場合はジュニア時代にバルセロナで鍛えられたという背景があるけれど、こういうトライができるようになったのは、日本サッカーが底上げされた証拠だろう。何より、ここ最近の彼の成長は目覚しいものがある。Jリーグで首位を走るFC東京のレギュラーにして攻撃をリードしている存在になったのだから。試合に出ていることにプラスして結果を残す、つまり、久保で言えばゴールであって、大迫で言えば無失点を目指す。今回のA代表入りは、彼が自分の力で勝ち取ったものだと言えるよ。何はともあれ、実力のある者が代表入りするのは自然の流れ。A代表の物差しはその選手の"実力"しかない。その結果に対して異論はないだろう」
 
――U-20ワールドカップを軽視しているという意見もありますが、それについてはいかがでしょうか。
 
「もちろんいろんな考えはある。それでもスタンダードは上のカテゴリーに行ける実力のある選手は行くべきだろうし、それを統一すべきだろう。これからは検討案件ではなくオートマチックにそういう考え方になっていくと私は考えている。これまではその都度、チーム間同士で話し合いを持って決めてきた経緯があったけれど、これからは全カテゴリーの共通理解があったほうがいい。いい選手に年齢は関係ない。大切なのは、そういった活躍を見せている選手をしっかりとした軌道に乗せ、ステップアップさせるということ。実力のある選手、将来性のある選手をピックアップする作業を含め、それはJFA技術委員会強化部の役割でもある。
 
 どういったタイミングや形でチームに加えて、そして活躍できるように導いていくか。こっち(欧州)の若手の抜擢タイミングを見ても同じで、やっぱりどのタイミングでデビューさせるか、というのはすごく慎重に進めている。もちろん日本でも同様で、ファーストステップというのは慎重に考えたい。久保の場合、キリンチャレンジカップから呼ぶことができたのは彼にとってよかった。本人はU-20ワールドカップに出たかったという想いもあったかもしれないが、今回はキリンチャレンジカップに参加してA代表選手としての意識をしっかり持ったうえで南米選手権=コパ・アメリカに挑む。精神的にもいいアプローチだと思う」
 

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