トリニータが手にした二門の「大砲」――6得点の藤本憲明と覚醒中のオナイウ阿道

2019年05月06日 柚野真也

戦術理解に時間を要したオナイウだが、前節から急激にチームにフィットしてきた感がある

戦術にフィットしてきたオナイウは、鳥栖との九州ダービーで貴重な先制点を挙げた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 令和初の九州ダービーに2-0で快勝した大分トリニータは、10節を終え6勝2分2敗で3位と快進撃が続く。前半はルイス・カレーラス監督が体調不良でベンチに入れない緊急事態に奮起するサガン鳥栖に苦戦したが、後半は好調オナイウ阿道、J1初得点となった小塚和季のゴールで突き放した。試合後に監督を代行した金明輝コーチが「準備不足だった。(大分とは)積み上げてきたもの、攻守で共通意識の差が出た」と振り返ったように、チーム力で大分が上回った。金崎夢生の言葉を借りるなら、「大分はサッカーの根本が徹底している。ゴールキーパーを含めて全員でボールを動かし、守備では全員で守る。全員が同じベクトルを向いていた」。
 
 大分はJ3に降格して以降、片野坂知宏監督が指揮してから目指すサッカーにブレがない。6年ぶりのJ1での戦いでも一貫している。それは新加入選手が加わっても変わることはない。ベースとなるものが明確だから、誰が出ても同じクオリティ、もしくはそれ以上のプレーを求めることができるのだ。

 先制点をアシストした高畑奎汰、得点したオナイウ、追加点を挙げた小塚は今季から加入した選手。それらの選手は個人差があるにせよ、片野坂監督が目指すサッカーを理解し、自分の個性をエッセンスとして加えることができた選手たちだ。「僕を含めてここに来た選手は、大分のサッカーをしたいという思いできている」という小塚は、開幕当初から片野坂監督が最も重視するポジショニングを理解していた。
 
 小塚に比べて、戦術理解に時間を要したオナイウだが、前節から急激にチームにフィットしてきた感がある。それは片野坂監督が開幕から我慢し続けて起用し続けたからこそ。選手を育てるには成功体験を重ねて自信を持たせるのが一番。特にストライカーは、得点が欲しい場面でピッチに送り、気持ちよくプレーさせた。監督に求められるのは一貫性と、我慢して使い続ける度量だ。オナイウは徐々に出場時間を伸ばし、チームの戦い方を理解し、7節に移籍後初得点をしてから波に乗った。
 

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