【日本代表】本田圭佑&香川真司 4-3-3での最適な活用法を探る

2014年10月10日 清水英斗

4-3-3を採用するU-21代表が活用法を読み解くサンプルに。

ジャマイカ戦ではインサイドハーフでの起用が濃厚な香川。4-3-3にうまくフィットできるだろうか。(C) SOCCER DIGEST

 香川真司が代表復帰を果たし、本田圭佑とともに前体制下で攻撃の中心的役割を担ったダブルエースの揃い踏みがこの2連戦で実現する。アギーレ新監督が採用する基本システムの4-3-3で彼らの最適な活用法とはいかなるものだろうか。
(※『週刊サッカーダイジェスト』10月14日号より)
 
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 トップ下は本田圭佑か? それとも香川真司か?
 
 これはザッケローニ時代の初期に見られた議論のひとつだ。最終的にこのポジションはキープ力があり、ゲームを落ち着かせる能力に長けた本田の『家』となった。
 
 今回も議論再燃かと思いきや、アギーレの4-3-3にはトップ下というポジションそのものがない。この場所は1トップ、両ウイング、両インサイドハーフの5人が流れのなかで使用できる共有スペースになる。果たして、どのように選手を配置するのがベストなのだろうか。
 
 たった2試合で、しかも未招集の香川を含めてシステムを考えるのは難しく、単なる好みの問題になってしまう。しかし、我々には良いサンプルがあった。アギーレのアシスタントコーチである手倉森誠が率いるU-21日本代表だ。A代表と同じく『柔軟に戦うこと』をコンセプトに掲げ、システムも4-3-3を採用。スムーズに選手をA代表へ送り出せる形を採っている。
 
 手倉森ジャパンでは、左ウイングに中島翔哉、1トップに鈴木武蔵、右ウイングに野津田岳人を置く。中島は左ウイングだが、中央に寄ってプレーしたがるタイプ。鈴木はポストプレーよりも、裏への抜け出しを得意とする。右ウイングの野津田は左利きのパワーシューター。この特徴に倣えば、香川、岡崎慎司、本田を並べた布陣は、アギーレジャパンでも第一候補と考えられる。
 
 ミランでも右ウイングを務める本田。スピードや突破力のなさを理由に、この起用に疑問を投げかける声も少なくない。だが、結論から言えば、この4-3-3における右ウイングは本田のベストポジションであると筆者は考える。
 
 本田は真っ直ぐな男だ。嘘やごまかしがなく、思いの丈をストレートにぶつける。ウルグアイ戦とベネズエラ戦のキックオフ前には、キャプテンマークを巻いてマイクの前に立ち、差別撲滅の宣言を行なったが、そのスピーチは力強いエネルギーに溢れ、心に響くような重厚感があったことを覚えている。
 
 いや、本稿が取り上げたいのは、そうしたキャラクターの話ではない。しかし興味深いのは、彼の人間性とプレースタイルには明らかな共通点があることだ。本田の身体の使い方は、直線的で重みがある。膝が少し内側に入る立ち方で、外圧に対してズッシリとした安定感を生み出す。その反面、動きが直線的で、横への可動域、ストップ、ターンといった幅広い動きの敏捷性には欠ける。
 
「俺はトップ下のDNAを持っている。それは自分の家のようなもの」と語っていた本田だが、ターンやストップから次のプレーに移るまで多少の時間的ロスが見られる。カウンターでは、その僅かな遅れが命取りだ。味方はオフサイドポジションにまで飛び出し、相手はプレスバックに間に合ってしまう。
 
 これは香川と比較すると分かりやすい。トップ下は360度のプレーが求められるポジションだ。直線的な本田に対して、香川は円を描くような回転の動きを得意とする。後方からの縦パスが入った時、クルッと回転しながら前を向くターンがスムーズだ。
 
 さらに左足でも右足でもドリブルやパスを正確に行なえるので、持ち替える必要もない。ドルトムントのような縦の速さを追求するダイレクトサッカーで、香川がトップ下として唯一無二の輝きを放ったのも必然だ。遅攻でタメは作れても、この縦のテンポアップは本田のトップ下では生み出せない。
 
 テンポの速いサッカーを追求するうえで、本田は使う側(トップ下)から使われる側(ウイング)へと変化する。右ウイングから直線的な突進力を活かし、斜めに飛び出す動きはベネズエラ戦でもすでに見られた。もともと本田はフィニッシャーとしての能力が高い。182センチと世界基準では平凡な上背だが、ボールの落下地点を読むのが早く、ヘディングも強い。右ウイング起用は、チャンスメーカーとしてボールに多く触ろうとした本田の古い記憶を捨て去り、一撃必殺のフィニッシャーとして真価を発揮させる。

次ページ「家」を定めず放浪する勇気を持つことが生き残りの条件となる。

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