いくら攻められても、なぜ広島は負けないのか。勝負強さの根源にあるもの

2019年04月15日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

ポゼッション率39.1㌫対60.9㌫と圧倒的にボールを握られても

7節を終えて5勝2分で首位。勝負強さが光る。写真:徳原隆元

[J1リーグ7節]神戸2-4広島/4月14日/ノエスタ

 ノエビアスタジアム神戸で行なわれたヴィッセル神戸対サンフレッチェ広島戦。前半が終わった時、スタンドにいた多くの人々が思ったに違いない。ついに広島の連勝が途絶えるのか、と。

 6節までわずか1失点という驚異的な堅さを誇っていた広島だったが、15分にウェリントンにヘディングシュートを浴びると、28分には古橋亨吾に一瞬の隙を突かれて、追加点を献上。前半のうちに、いずれもセットプレーからあっさりと、ふたつの失点を重ねた。

 相手DFがバックパスをミスしたおかげで、パトリックのゴールで辛うじて1点を返していたものの、前半は常にボールを握られ防戦一方だった。特にアンドレス・イニエスタには寄せても寄せてもヒラリとかわされ、虚を突くスルーパスでゴールに迫られた。前半だけを見れば、明らかに個の力量差を見せつけられた。

 それでも結果は4-2。後半の8分間で3ゴールを奪い、見事に逆転勝利を収めている。リーグ5連勝で首位だ。なぜ広島は負けないのか。
 
 試合の潮目が変わったのは、後半の60分過ぎ頃だった。早くトドメをさしたい神戸が追加点を狙って前傾姿勢になったのを逆手にとり、広島は分厚いサイドアタックでカウンターを仕掛けていった。すると、柏好文のヘディングで決めた65分の同点ゴールを皮切りに、70分、73分には渡大生の鮮やかなボレーシュート2発で一気に2点のリードを奪い、勝利を呼び込んでみせた。
 
 ただし、この豪快な逆転劇は偶然ではない。広島の試合運びの妙があったのだ。左ウイングバックでフル出場したキャプテンの柏は、以下のように振り返る。
 
「チームの中では3点目を取られないことを重要視していました。神戸はやはり得点力がありますし、3点目を決められるのと1点差でいくのは大きく違う。ただ守りながらも、チャンスは絶対に来ると、チームの中でしっかりとコミュニケーションが取れていました」
 
 最終的なポゼッション率は39.1㌫(広島)対60.9㌫(神戸)で、パス数は441本(広島)と702本(神戸)と圧倒的にボールを握られた。それでも落ち着いて試合展開を読み、反撃のチャンスを待っていたのだ。

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