“沈黙の2連戦”も香川にとって無駄ではなかった。9か月ぶりの代表復帰で見えた「新たな景色」

2019年03月27日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

若手の台頭を肌で感じたからこそ、悔しさも少なからず抱いたに違いない

ボリビア戦ではキャプテンマークを巻く。決定的な仕事はできなかったが、責任感を強めた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

「ガラリと景色が変わった」
 
 香川真司は約9か月ぶりに代表復帰を果たした3月シリーズで、これまでにない感覚を味わっていた。それは、香川に大きな変化をもたらす転機となるかもしれない。
 
 端から見れば、インパクトを残せたとは言い難い。65分から途中出場したコロンビア戦、先発出場したボリビア戦、いずれも決定的な仕事はできなかった。

 試合前、モニターの映像とともにアナウンスされる選手紹介の際に、スタジアムからひと際大きな歓声が上がっていたのが、香川の名前が呼ばれる瞬間だった。しかし背番号10をつけたアタッカーは、その大きな期待に応えることができないまま、所属のベジクタシュがあるトルコへ帰ることになるのだ。
 
 とりわけ悔やまれるのが、消極的な姿勢。2試合を通じて香川が放ったシュートはコロンビア戦の1本のみ。ボリビア戦では先発出場しながら、シュートチャンスを得られなかった。
 
 代表デビューや出場2試合目の選手も多く、チームとして機能しなかったエクスキューズがあったとしても、やはりトップ下あるいはシャドーストライカーのポジションを担う香川の迫力不足は否めなかった。
 
 香川自身、この2連戦について「シュートであったり、そこまでいく局面だったり。そこは物足りなかった」と反省を述べている。

 24歳の中島翔哉が2試合で5本のシュートを放ち、そのうちの1本を得点につなげれば、20歳の堂安律もコロンビア戦の前半に果敢にミドルシュートを打っていた。そんな若手の躍動を見て香川は「どんどん仕掛ける姿勢はチームの武器になっている。それがこの半年間築き上げてきたチームのストロング。その積極性は良い姿勢だと思う」と称賛する。
 
 若手の台頭を肌で感じたからこそ、「自分の良さはまた違ったところにあると思うので、それは忘れずにやっていきたい」と信念を貫く一方で、悔しさも少なからず抱いたに違いない。
 
 ただし香川にとって、"沈黙"したコロンビア戦とボリビア戦を含めたこの9日間にわたる代表活動は、決して無駄ではなかっただろう。

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