サンペールは"神戸のブスケッツ"になれるのか?「15分間」で見せた危うさと可能性

2019年03月21日 吉田治良

推進力のあるドリブルは、彼が憧れるブスケッツにはない武器でもある

清水戦でJデビューを果たしたサンペール。わずか15分間のプレーながら随所に才能の片鱗を覗かせた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 アディショナルタイムを含めても15分弱だろう。
 
 たったそれだけのプレータイムで、すべてを判断するつもりはもちろんない。けれど、みそ汁の味見をするのに丼鉢一杯分を飲み干さなくてもいいように、たとえわずかな出場時間であってもプレーヤーとしての資質はある程度、読み取れるものだ。
 
 3月17日の4節・清水エスパルス戦でJリーグデビューを飾った、ヴィッセル神戸のスペイン人MF、セルジ・サンペールのことだ。
 
 1-0とリードして迎えた80分、FWの古橋享梧に代えてサンペールを投入した理由を、フアン・マヌエル・リージョ監督はこう語っている。
 
「中盤にもう一枚加えることで、オープンな展開になることを避け、ゲームをコントロールしたかった」
 
 ほぼ同じような試合展開だった2節のサガン鳥栖戦では、「選手交代によって、それまで上手くいっていたものに(好ましくない)修正が掛かってしまうケースがある」と言って、交代枠をひとつも使わなかったリージョ監督が、この日唯一切ったカードがサンペールだった。

 来日間もない、しかも故障の影響で昨年10月以降、およそ5か月間も公式戦のピッチから遠ざかっていた選手を、この難しいシチュエーションで使ったのだから、指揮官の信頼は相当に厚いのだろう。
 
 サンペールが配置されたのは中盤の底、すなわちピボーテ(アンカー)の位置。これによって、それまでダブルボランチを組んでいた山口蛍と三田啓貴が1列前のインサイドハーフに押し上げられた。数字で表わせば、4-2-3-1から4-3-1-2への変更。中盤のひし形の頂点にアンドレス・イニエスタがいて、最前線はルーカス・ポドルスキとダビド・ビジャの2トップという形だ。
 
 トップチームでの出場機会は限られたとはいえ、さすがはバルセロナの下部組織で育った逸材である。短い時間であっても、随所に才能の片鱗を覗かせている。
 
 常に首を振って敵味方の位置を確認し、ピッチ上にトライアングルを作るべく細かくポジションを修正しながら、ダイレクトもしくはワンタッチで小気味よくボールを捌く。そのプレースタイルは、かつてのシャビ、現在のセルヒオ・ブスケッツを想起させた。さらに最終ラインまで落ちてGKからパスを引き出し、そのままするすると持ち上がる推進力のあるドリブルは、彼が憧れるブスケッツにはない武器でもあるだろう。
 

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