勝負師ツネ、会心の采配! なぜガンバ大阪は土壇場でJ1王者を寄り切れたのか

2019年03月17日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

どちらに転んでもおかしくない状況下で…

勝負所での采配が冴えた宮本監督。破壊的な川崎の攻撃にも臆さずリスクを掛けた。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ第4節]川崎 0-1 G大阪/3月17日/等々力

 ガンバ大阪にしてみれば、絵に描いたような快勝劇だろう。

 技巧派のブラジル人アタッカー、アデミウソンは試合後、「こんなに走ったゲームは過去にもなかなかないね」と笑った。それでも、「疲れた」とは言わない。「相手はフロンターレだよ? 今日は一人ひとりに守備のタスクがきっちり与えられていて、僕もそれを全うしようと必死に頑張った。当たり前のことをしただけさ」と胸を張るのだ。

 J1リーグ第3節を終えて、ガンバは1勝2敗。8得点はいかにも立派だが、いただけないのは失点数だ。同時に8失点も喫しているのだから目も当てられない。前節の名古屋グランパス戦では、2-2のスコアでゲーム終盤に突入し、攻撃のカードを立て続けに切って勝負に出たが、逆に勝ち越し点を奪われて沈んだ。

 週が明け、宮本恒靖監督は策を講じる。

 CBの三浦弦太を右SBにせり出させ、4バックを「3バック+左SB」のようなイメージで再構築した。4-4-2から4-2-3-1にシステムを変えてピッチのスペースをくまなく埋めさせ、選手たちにはより一層のハードワークを厳命。水曜日のルヴァンカップ(松本山雅戦/2-1で勝利)でチームは結果と内容を伴う出来を披露した。

 
 今節の川崎戦は、ルヴァンカップとまったく同じスタメンと布陣を選択した。指揮官は「ルヴァンで起用したメンバーのパフォーマンスがある程度良かったことと、ルヴァンはこの試合(川崎戦)を見据えてのものでもあったので、同じメンバーで行こうと考えた」と明かす。選手個々のインテンシティーは過去3戦にはなかったほど苛烈で、川崎に好機を掴まれ、守→攻の切り替えが上手く行かずとも、アグレッシブに手数を出すことを忘れない。実に、鬼気迫る戦いぶりだった。

 試合はスコアレスのまま推移する。後半途中、川崎がふたりの交代選手を使って前がかりになっても、宮本監督は動かなかった。カードを切るのではなく、トップ下にいた遠藤保仁を本来のボランチに下げ、倉田秋をサイドに張らせる4-4-2へとシフトチェンジしたのである。この11人で決勝点を取りにいけ、そんなメッセージが込められていただろうか。

 90分近くになっても、指揮官ツネはひとりも交代枠を使わなかった。

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