【戦術解析】好調なゆえにハマった落とし穴…イランには『ストレス耐性』が著しく欠けていた

2019年01月30日 清水英斗

個と連係が優れたイランに、日本はその両方で対抗した

粛々と試合を進めた日本が3-0の快勝。ストレスをためたイランは、試合終盤に乱闘騒ぎを起こした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアカップ準決勝のイラン戦は、日本が3-0で勝利を収めた。
 
 前半の45分間、お互いにシュートこそ少なかったが、集中と緊張を漂わせる好ゲームだった。
 
 イランが得意とするチーム戦術は、21番MFアシュカン・デヤガを中心としたローテーション式のビルドアップ。ポジションを変えてマークをずらしつつ、サイドを起点にボールを運んでくる。それに対し、日本は大迫勇也と南野拓実が相手センターバックに早めにプレッシャーをかけた。イランにポジションチェンジの時間を与えず、ローテーションを発動するタイミングを奪っている。
 
 結果として、イランはFWサルダル・アズムンへのロングボールが増えた。しかし、こちらも日本は、冨安健洋と吉田麻也がほぼ完璧に封じている。
 
 個と連係が優れたイランに、日本はその両方で対抗した。うまくいっているチームは何も変えないので、分析しやすい面もある。攻撃面でも前半はアタッキングサードで崩し切る場面こそ少なかったが、主導権を握ったのは日本だった。時間が経てば経つほど、日本が有利になるはず。このまま戦えば、延長戦もあり得るが、とにかく粘り強く。
 

 そんな予測が立った後半の矢先、思わぬ形でゲームの均衡が崩れた。56分、イランの選手が審判へ抗議に向かっている間に、南野が死んだふりダッシュでクロスを上げ、大迫の先制ゴールにつながった。
 
 この試合最大のキーワードは、『ストレス耐性』と言っていいのではないか。
 
 この大会、あまりにも好調だったイラン。自分たちの思い通りに試合を進め、うまく行き過ぎていた。しかし、この試合では王道パターンの個と戦術が、日本によって封鎖されてしまう。自分たちのアクションが通じず、チャンスはミス待ちだけ。
 
 もちろん元々の性格もあるが、加えて、いつも出来ていることがうまくいかない焦燥感は、今大会好調のイランだからこそ、大きなストレスになったはず。前半から何かあるたび、審判の判定に矢印を向けてしまうことが、集中力が失われていく象徴的なさまだった。南野の死んだふりによるセルフジャッジの隙は、出来過ぎな現象としても、その潜在要因であるストレス耐性の低さが、前半から存在したのは疑いようがない。

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