【岩政大樹】アズムンに”頼りすぎた”イラン。日本は戦略でもディテールでも上回った

2019年01月29日 岩政大樹

冨安は今後どこまで伸びていくのか計り知れない

吉田(22番)と冨安(16番)のマークに遭って沈黙したアズムン(20番)。イランは、このエースに頼りすぎた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 サッカーにおける理想的な展開でした。相手の攻撃を許さず、得点を取り、相手が出てきたところをダメ押し。それを準決勝の舞台で成し遂げたのですから「あっぱれ」と言う他ありません。3−0というスコアは、拍子抜けしてしまうほど素晴らしい結果でした。
 
 イランはとても強いチームでしたが、準々決勝の中国戦に3−0という見事な勝利を飾ったことで、日本戦のプランに狂いが生じたように見えました。中国戦でクリアボールをことごとく競り勝ってゴールに結びつけた20番のアズムン選手への意図したルーズボールを、日本戦でも頼りにしすぎました。吉田選手と冨安選手はアズムン選手に対し、ヘディングの競り合いこそ後手に回りましたが、1試合を通してシャットアウト。エースに仕事をさせませんでした。
 
 特に冨安選手は若いながらも成熟した選手であることを示しました。立ち上がりのシーンで権田選手との間でわずかながらアズムン選手に触られるシーンを作られてからは間合いを図れたのでしょう。その後は見事な安定ぶりでした。プレッシャーのかかるビッグゲームで瞬時に相手との間合いを図り、その後の相手の老獪な駆け引きにも動じずに対応ができる。まさに成熟した選手のそれです。今後どこまで伸びていくのか計り知れません。
 

 そして、何と言っても大迫選手です。得点を取るだけでなく、南野選手や堂安選手も輝かせることができる。そのための立ち位置が実に秀逸です。ボールを受ければすかさず前を向き、同時に全体の絵を瞬時に把握して崩す形を描けるので、攻撃がノッキングを起こしません。そのための技術も判断力も備えているわけですから、もはやアジアのレベルを超えた選手。不在の試合との対比も含めて、今大会で存在感をさらに高めたと思います。
 
 縦パスの受け手となる大迫選手に対しての、出し手の立ち位置も、イラン戦では意図して入ったことが伺えました。特に、試合の入りとして気になっていた前半を有利に進められたのは、ボールを回す際の立ち位置の整理ができていた影響が大きかったと思います。
 
 イランは守備の時は4−5−1の布陣を敷き、中盤の5枚が並ぶように立ちます。その際、急所となるのは「5」の真ん中、9番のイブラヒム選手の前の位置です。ここに立つと、9番の選手が前にプレスに行こうとしますが、その背後には大迫選手が待ち構えています。前に行こうとすれば背後が空き、行かなければボールを奪えない。そのジレンマに誘いこめる位置に柴崎選手と遠藤選手が意図的に立つようにしていました。それによって、イランは思うようにボールを奪えず、奪ってもゴール前の深い位置となってしまうために、アズムン選手へのロングボールをさらに助長させられました。
 

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