【選手権】日本一、青森山田の知られざる感動秘話――。退任するOBコーチがGK陣と紡いだ絆

2019年01月17日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

大久保コーチ自身も選手権に2度出場。ベスト16で敗退した悔しさが指導者の原点だ

今大会でメンバーに入ったGK3人と記念撮影を行なった大久保コーチ(右から2番目)。彼らとは固い絆で結ばれていた。写真:田中研治

[高校選手権・決勝]青森山田3-1流経大柏/1月14日/埼玉
 
 1月14日に行なわれた高校サッカー選手権の決勝。青森山田は流経大柏を3-1で下し、2年ぶり2度目の優勝を果たした。
 
 試合後、ピッチの上で喜びを爆発させたスタッフと選手たち。その裏で生徒たちの成長を感慨深く見つめている人物がいた。今年度限りで退任が決まっている大久保隆一郎GKコーチだ。
 
 大久保コーチは青森山田のOB。自身も2005、06年度に選手権に出場するなど、選手として輝かしい実績を残してきた。その一方で"日本一"の目標は叶えられず、冬の檜舞台はいずれもベスト16で敗退。そうした悔しさが指導者の道へと進むきっかけとなった。
 
 大学卒業後に母校・青森山田のGKコーチに就任。そこから試行錯誤しながらも、「プロになるという夢を教え子に託そうと思った」との思いから生徒たちと全力で向き合ってきた。GKコーチ就任6年目の16年度には選手権を制覇。教え子である廣末陸も卒業後にFC東京に加入し、想いは結実した。
 
 そして、2年後の今年度。「さらなるステップアップを目指したい」という想いから同年度限りで退職を決め、青森山田でのラストイヤーを迎えた。
 
 退任の動きを選手たちも察していたようで、大久保コーチの微妙な変化から感じ取っていたという。同年から新しく加わった古川大海GKコーチが10月の県新人戦に帯同。「新人戦も新しい古川コーチが帯同して、大久保コーチの仕事も少しずつ渡していた。なので、僕たちの中で辞めるのかもしれないなとは話していたんです」と、正GKの飯田雅浩(3年)は当時を振り返る。
 
 迎えた最後の選手権。大久保コーチの退任は草津東との2回戦後に行なわれたミーティングで監督の口から正式に告げられた。「多少ですけど、大久保のために頑張ろうと思ってくれたのであれば、良かったです」と本人は謙遜したが、選手たちのモチベーションは当然のごとく上がった。とりわけ、同コーチを慕っていた飯田が「支えてもらったことも含めて感謝しかない」と話したように、選手たちは大久保コーチに恩返しするべく、さらに一致団結の想いを強めた。
 
 流経大柏との決勝を制した試合後。大久保コーチは黒田剛監督、正木昌宣コーチに続いて胴上げをされると、手塩に掛けて育ててきたGK陣とともに記念撮影を行なった。

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