躍動した南野と沈黙した北川――ふたりの出来を分けた”決定的な差"とは|アジア杯

2019年01月15日 清水英斗

陰と陽に分かれたひとつの要因は、ポジションだ

ゴールこそ奪えなかったものの、南野は多くの決定的なチャンスに絡んだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアカップ・グループリーグ第2戦の日本対オマーンは、1-0で日本が辛勝した。
 
 特に際立ったプレーを見せたのは、南野拓実だ。日本は前半に多くの決定機を得たが、そのほとんどは、この9番の男。26分に原口元気のPKにつながる場面も、堂安律のダイレクトパスにフリーで飛び出したのは、南野だった。そのシュートのこぼれ球から、日本がPKを得ている。判定の正誤はともかく。
 
 対照的に、大迫勇也の負傷によってスタメン出場した11番の北川航也は、ほとんど印象を残せなかった。シュートは0本。ボールタッチも非常に少ない。
 
 なぜ、北川と南野はこれほどハッキリ、陰と陽に分かれたのか?
 
 ひとつの要因は、ポジションだ。1トップで深さを作る北川は、相手センターバックの前で、"常に見られている"FWである。一方、トップ下の南野は、相手ボランチの裏でふらふらと暗躍しながら、不意を突いて飛び出す。
 

 南野のほうが予備動作の距離が長いので、味方のパスにタイミングを合わせやすい。また、相手センターバックは北川に対してふたりで守るため、ボランチ裏から飛び出す南野を捕まえづらい状況になる。さらにオマーンの攻撃的な右サイドバック、11番サード・アルムハイニは、中へ絞る意識が薄く、カバーリングが利かない。このDFの隙間に、南野の飛び出しが、面白いようにはまった。
 
 相手に見られている北川と、間で浮いていた南野。これは陰と陽に分かれた要因のひとつ。
 
 ただし、これがすべてではない。単純にこのふたりは、飛び出しのクオリティに差がある。
 
 最初に試合を見たときは、良い連係と感じた。北川の動きがDFを引きつけ、作ったスペースを南野が突いている。そう感じた。ところが、もう一度試合を見直すと、多少印象が変わった。正直、結果論でおとりになっている部分もある。北川は本当にパスを欲しがって動いたときも、ほとんどボールを引き出せていない。
 
 たとえば、7分。吉田麻也がボールを持ったとき、北川はゴールから離れるカットアウトで飛び出し、縦のフィードを引き出そうと試みる。しかし、ボールは出なかった。その直後の流れで、再び吉田がボールを持つと、フィードへ。ところが、今度は北川が動かなかった。足下で受けようとした。吉田としては、北川の動き出しをうまく使えなかったので、再チャレンジした格好だが、結果としてミスになった。
 

次ページパスの正解は受け手が決めるもの。しかし、北川はその正解を明示しない

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