新大河ドラマ『いだてん』のスタートに想う。1912年五輪、日本と世界のサッカーは──

2019年01月09日 石川聡

FIFA創設から8年。世界規模の大会には程遠く

1912年五輪・ストックホルム大会。サッカー競技はまだ欧州勢だけが参加する規模だった。(C)Getty Images

 今年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』が1月6日に始まった。

 日本人とオリンピックの関わりを辿る物語で、日本史上初の参加選手となったマラソンの金栗四三(かなくり・しそう)と、1964年の東京大会招致に尽力した田畑政治(まさじ)を中心に話は進むという。2度目の東京開催を来年に控え、オリンピックと日本人の歩みを振り返る良い手引きとなりそうだ。

 金栗が参加したのは、1912年にスウェーデンの首都で開催されたストックホルム大会だ。この大会のメイン会場として建設されたのがストックホルム・スタディオンで、マラソンのスタート&ゴール地点となった。収容数1万5000ほど(用途によって異なる)の小さなスタジアムは現存し、『いだてん』のロケも行なわれた。サッカーでは1891年創立の古豪ジュールゴーデンスがホームスタジアムとして使用している。

 このスタジアムはストックホルム大会のサッカー競技でも使用された。サッカーはその4年前のロンドン大会(英国)で正式競技となり、出場国は6から11に増えた。顔ぶれはオーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、英国、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、ロシア、そして地元スウェーデンとすべて欧州勢。1904年に国際サッカー連盟(FIFA)が創設されて8年。この時点で欧州以外の加盟国は皆無に近く、世界規模の大会となるには程遠かった。

 
 ちなみに大正元年にあたる日本では、すでに師範学校などでサッカーは行なわれていたものの、大日本蹴球協会(現在の日本サッカー協会)が設立されてア式蹴球全国優勝競技大会(現在の天皇杯/JFA全日本サッカー選手権大会)が始まったのが1921(大正10)年。FIFA加盟は1929(昭和4)年のことだった。

 ノックアウト方式で実施されたストックホルム大会は、決勝で4年前と同じく英国とデンマークが対戦。英国が4-2の勝利を収め、2連覇を達成した。2回戦から登場した英国はハンガリーに7-0と大勝し、準決勝でもフィンランドを4-0と一蹴。このフィンランド戦では2点をリードした後、PKを獲得したが、判定が相手にとって厳しすぎると感じた英国は、キックをわざとゴールバーの上に蹴り上げて外した。紳士の国といわれた英国のスポーツマンシップと同時に、世界最強を自負するサッカーの母国の自信が窺えるエピソードだろう。

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