【インタビュー】FC東京 フィッカデンティ監督「全員がぴったりのタイミングで演奏できるようになった」

2014年08月28日 片野道郎

「試合を重ねながら、武藤やヒロキなどが自信や確信を」

タイミングの重要性をオーケストラに例え、「いまは全員が同じ楽譜をぴったりのタイミングで演奏できるようになった」と好調の理由をそう明かした。 (C) SOCCER DIGEST

――ワールドカップの中断前までは不安定な戦いが続きましたが、中断明けからは、結果というレベルで見ると劇的と言っていいほど良くなった。中断の間に何が変わったのか、東京に何が起こったんだ、という声も少なくありません。
 
「確かに結果というレベルでは大きな変化がありました。でも内容に注目すれば、中断前から良いサッカーはできていました。それで負けた試合もありましたけどね。例えばアウェーの広島戦やホームの大宮戦(いずれも0-1)がそう。チャンスをたくさん作ったけれどゴールが奪えませんでした」
 
「これはパフォーマンスというよりも自分たちのサッカーに対する自信や確信、メンタリティーの問題です。武藤、ヒロキ(河野)といった若い選手たちは試合を重ねていく中で徐々にそれを獲得して、ゴール前でも落ち着いてプレーできるようになってきました。他の選手たちも、失点をしないこと、失ったボールをすぐに奪回するといったところで、より強い意志を出してプレーしています。変わったのはむしろそういうところです。チームとして成長した、という言い方が一番ふさわしいと思います。パフォーマンスという点では、中断前から正しい道を進んでいましたからね」
 
「実際、戦術的に見れば我々のサッカーは以前も今も大きく変わってはいません。チャンスは以前からたくさん作っていました。今は少なくともその半分をしっかりと決められるようになりました。以前は1点取るためには5回の決定機が必要でした。だから、守備が持ちこたえても勝つのは簡単ではありませんでした。一番大きいのはその差です」
 
――つまり、ポイントはメンタルな側面にあったということですか。
 
「それだけではありません。メンタリティーが変わったとすれば、それは日々の積み重ねの結果です。何か魔法の言葉があって、それを口にすればチームが変わって突然勝ち始めることはあり得ません。毎日トレーニングを続け、週末に試合を戦う中で築き上げてきたものが、結果という形でピッチ上に表われるまでにはそれなりの時間が必要です。我々の仕事場はピッチの上です。そこでトレーニングを積み重ね、話し合いの中で考え方ややるべきことを伝える。それの繰り返しです。時には議論を戦わせることもある。何のためにこのトレーニングをするのか、我々はどこを目指しているのか、毎日の練習で100パーセントを出し切ることがいかに大事か、そういうことを話し合い、ピッチの上で積み重ねて行く中で、ここまでチームが成長してきました」
 
――対話が非常に重要な鍵だったということですね。
 
「ここ日本ではそれが非常に重要だと思っています。私のようにまったく違うサッカー文化を持った国から来た監督にとってはなおさらです。私の考え方を伝え、理解してもらうために対話は欠かせません。だから選手たちとはたくさん話し合ってきました」

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