初の選手権で3-0快勝!「練習試合は強いが、本番では勝てない」龍谷が生まれ変われたのはなぜ?

2019年01月02日 川端暁彦

太田監督の発想転換が、そのままチームの転機に

出口(16番)が2ゴールの活躍。計3点を奪った龍谷が羽黒を下し、2回戦を突破した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・2回戦]羽黒0-3龍谷/1月2日/フクアリ

 初出場・龍谷を率いる太田恵介監督は、初戦の入りをボクシングの攻防にたとえ、「まず殴りに行け!」と煽って伝えた。消極的に入っても仕方ない。「チャレンジャーなので」(後藤嵩裕)というメンタリティを押し出し、立ち上がりから激しくプレスをかけてゴールを狙いに行くゲームプランだった。
 
 指揮官はゴールの形自体は思っていたものではなかったと笑いつつ、立ち上がり3分と9分に奪ったゴールで勢いづいた流れは、初出場の緊張感を撥ね除けて前へ出た選手たちの成果だと喜んだ。結果として、試合は3-0の快勝。「後半はもう少し落ち着いてボールを動かしたかった」という反省点も忘れなかったが、総じて会心のゲームだったのも確かだ。
 
 福岡や草津(現・群馬)などでプレーした太田監督の下で、龍谷が本格的な強化を開始して5年目。初めて迎えた選手権の大舞台だったが、「自分が緊張したりすることはなかった」と言う。「どこにも負ける気はない」と豪語するハードワークの部分をあらためて徹底しながら臨み、見事に初出場初勝利をもぎ取った。
 

 清水商から福岡大というキャリアを考えても、あるいは太田監督の現役時代を思い出してみても、元よりそうした泥臭いサッカーを好む監督だったかのように思われがちであるが、実際のところ就任当初に志向していたのは、よりテクニカルなサッカーだ。しっかりボールをポゼッションし、個人の技術的優位を押し出して勝利を狙ってきた。
 
 だが、「自分が教えすぎていたんだと思います。道に落ちている小石まで全部自分が取り除いていた」(太田監督)。練り込まれたトレーニングを重ね、対戦相手の分析もしっかり落とし込んでいた。だが、試合は水ものである。予期せぬことが起き、思わぬ展開もある。そういった苦しいときに「選手がベンチを見るようなチームになっていた。自発性がなくなっていた」。
 
 結果として、「練習試合では本当に強かった。でも本番では全然勝てない」(太田監督)という奇妙なチームになっていた。
 
 試行錯誤の中で、指揮官は発想をひっくり返した。
 

次ページ指揮官は、選手がつまずくと予想できる「小石」をあえてそのままにした

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事