【選手権】「浅野拓磨は別人になった」四日市中央工の樋口監督が選手権の“目に見えない力”を熱く語った

2019年01月01日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「1回戦の浅野拓磨と決勝の浅野拓磨は別人でしたからね」

今年度限りでの退任が決まっていた樋口監督。最後の大会を終え、選手権を熱く語った。写真:田中研治

 松本入りが内定している山本龍平(3年)やU―17日本代表の和田彩起(2年)など、タレント揃いの四日市中央工が秋田商に0-2で敗戦。試合後、樋口士郎監督はゲームをこう振り返った。
 
「今の四中工の現状かなと」
 
 前半は相手のハイプレスに苦しみ、34分にクロスから秋田商のFW長谷川悠にシュートを叩き込まれた。後半はポゼッションで上回り主導権を握ったものの、28分にCKからゴール前の混戦で押し込まれて失点。気持ちを前面に押し出して戦った秋田商に屈し、指揮官はチームの現状とは"甘さ"だと言葉を続けた。
 
「メンタル的に弱い部分、やらなければならないプレーがおろそかになった。良い時は良いけど、上手くいかない時に修正する能力に欠けていた。選手権の空気感でチームが成長していくのは何度も経験しているので、今日勝てば(トーナメントで上に)行く可能性もあるかと思っていましたが、逆にこの結果も悪い方の予想の範疇かなと思います。高校サッカーで勝とうと思ったら、メンタル的な部分も技術も戦術も含めてシビアな世界なので」

 1991年には帝京と両校優勝(コーチとして在籍)、2011年には準優勝も果たした名門の指揮官ならではの言葉だろう。今年度で退任が決まっており、最後の選手権だったが、「僕が最後というのは(選手のメンタルに)全く関係ないですよ。高校サッカーはそんなに甘くない、そうじゃないんです」と語気を強めて厳しい世界だと話す。
 
 しかし、そんな大会だからこそ選手権には、選手を育てる"目に見えない力"があると熱く語った。
 
「僕の感覚からすると、選手権は技術・戦術・体力の部分だけでは勝てないところがあります。(今年の)ウチで不足している部分で言えば、逞しさやタフさ。上手い選手がハードワークをしてチームのためにプレーするというような、目に見えないところの要素が強い大会だと思います。

 だから、リーグ戦よりもジャイアントキリングが起こりやすい。そのなかで、強いチームが勝ち上がるなら、上手い選手が頑張れるという要素があります。だからこそ、選手権は選手のいろんな部分を育てる大会だと思うんです。

 本当、浅野拓磨もそうだったんですよ。1回戦の浅野拓磨と決勝の浅野拓磨は別人でしたからね。10日間くらいで変わっていく姿を目の当たりにしましたから。そういう力のある大会だと思います」

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