ブラジルで挫折し日本の高校へ…元鹿島のカイオがクラブW杯決勝の舞台に辿り着くまで

2018年12月22日 小室功

鹿島入団当時はネイマールを意識するイマドキの若者であり、野心家だった

アル・アインの攻撃陣をリードするカイオ。R・マドリーを相手に持ち前の突破力は通用するか。(C) REUTERS/AFLO

「憧れの選手は?」
 
 定番中の定番とも言える、こんな質問をしたら「ネイマール」という答えがすぐに返ってきた。「だろうな」と思った。なぜなら、左サイドでドリブルする時のボールの置きどころやフェイクの入れ方、右足アウトサイドでカットインしていく姿勢など、そっくりだもの。
 
 ついでに言えば、Tシャツやジーンズはもとより、キャップやシューズの選び方に至るまで、ふだんの服装もまたネイマールに似ていた。もっとも、それはイマドキの若者のファッションコーデなのだろうけど。
 
 カイオ・ルーカス・フェルナンデスはブラジル出身の24歳。"本家"のネイマールより2つ年下だ。現在、UAE(アラブ首長国連邦)の強豪アル・アインに在籍しているが、2014年から約2シーズン半、鹿島にいたことはご存知だろう。攻撃の推進力を生み出す韋駄天で、アグレッシブかつテクニカルなプレースタイルが、鹿島のファンやサポーターの心を鷲掴みにしていた。
 
 とはいえ、千葉国際高(千葉)から鹿島入りした当時は無名も無名。異色ではあるけれど、周囲の関心は取り立てて高いわけではなかった。クラブ首脳陣は従来の高卒ルーキーと同様、「2~3年をかけて、じっくり育てる」と明言。トニーニョ・セレーゾ監督も「非常に意欲的だが、Jリーグのレベルで戦うには時間が必要」と、早い段階での起用に慎重だった。
 
 だが、カイオは野心に満ちていた。
 
「ジーコがいた鹿島はブラジルのなかで、いちばん有名なクラブ。鹿島の一員になれて、本当にうれしいよ。一日も早く試合に出て、チームの勝利に貢献したいし、タイトルを獲りたい。鹿島で活躍して、お金を稼ぎたい!(笑)」
 
 その言葉に偽りはなく、そして、実現のための努力を惜しまなかった。
 
 ルーキーシーズンの3月15日、Jリーグ3節の鳥栖戦で早くもリーグ戦デビューを飾ったかと思えば、4月6日のG大阪戦(6節)ではJ初スタメン&初ゴールを記録。持ち前の快足よろしく"あれよ、あれよ"という間に頭角を現わし、5月の声を聞くころにはすっかりレギュラーに定着したのだ。
 

次ページセレクションに合格して日本行き。プロになるための最後のチャンスだった

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