会見では語られなかった想い。川口能活はなぜ「サッカーが嫌いになってしまう」と思ったのか?

2018年12月01日 小須田泰二

最終戦を前にして見せる真のプロフェッショナルの姿

12月2日の今季最終戦をもって現役を引退する川口。最後まで調整に余念がない。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 日本代表として偉大なる足跡を残したGK、川口能活が12月2日に行なわれるJ3リーグ最終節をもって現役を引退することになった。すでに11月14日に行なわれた引退会見で、本人から様々な言葉が語られている。しかし、川口は会見では口にしていなかった、ある熱い想いを告白していた。

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 引退のカウントダウンが始まっている――。

 11月29日、SC相模原の今シーズン最後となる公開練習が行なわれた。相模原市内にある公園内のグラウンドに集まったファンはおよそ100人。彼らの視線の先は、もちろん今季限りで現役を引退することを表明した川口能活である。

 12月2日のJ3リーグ最終節、鹿児島ユナイテッドFC戦は、川口の現役最後となるゲームとなる。スタメンが確定しているわけではない。しかし、川口は出場のチャンスがある限り、最後まで準備に余念がない。
 
 9月2日の鳥取戦以降、およそ3か月以上も公式戦から遠ざかっている。歴代最多となる4度のワールドカップ経験者でもある偉大なるゴールキーパーは、そんな屈辱的な状況に立たされていながら、決して腐ることなく、自分が置かれた状況のなかでやるべきことをこなしている。口で言うのは簡単だが、だからこそ、「プロフェッショナルとしてこの歳までプレーできている理由はそこにある」と話してくれたのは、川口のふたつ歳上にあたる山口貴之だ。SC相模原ユース監督である山口はトップチームのアシスタントコーチとしても練習をサポートし、川口の居残り練習のパートナーを務めている人物でもある。

「今までいろんな選手を見てきたけれど、やっぱり長く生き残っている選手というのは、試合に出られない時になにをすべきか、分かっている選手。(川口)能活は試合に出られない時に、一緒にボールを蹴ってくれないかって自分から志願してきた。悔しさとか歯がゆさとか、その気持ちをどこにぶつけるのか。いい選手というのは、それを人じゃなくて、練習にぶつける。身近で言えばカズ(三浦知良)さんもそう。今の現状に満足できないから練習にぶつける。常に上を目指しているということの証。本当のプロフェッショナルだよ」
 

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