R・マドリーの日本人スタッフが語る“こぼれ話”「平均観客5000人のエイバルの収入が日本一の浦和と同じなのは…」

2018年11月30日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

ラ・リーガとJリーグの放映権料は雲泥の差。

人口2万7000人ほどの町にあるエイバル。初昇格以来4シーズン連続で残留を果たすなど健闘を見せる。(C)Getty Images

『ワールドサッカーダイジェスト』誌では、日本人で初めてレアル・マドリーのスポーツマネジメントMBAコースに合格し、卒業後にクラブのフロントスタッフに採用された酒井浩之氏に、欧州サッカーにまつわるこぼれ話やウラ話を語ってもらう連載を掲載中だ。

 その第4回では、ラ・リーガ1部でもっとも小規模なクラブのひとつであるエイバルの取り組みについて、語を訊いた。その一部をウェブ版として紹介する。
 
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 9月の終わりに『デロイト』社から発表された「Jリーグマネジメントカップ2017」で浦和レッズが1位になりました。
 
 これは、Jリーグの全54クラブの税務状況やマーケティングといったビジネスマネジメントに関わる部分を数値化してランキングにしたもので、この17年度版が4回目になります。
 
 そのうち3度トップに立っている浦和の最大の強みは、リーグトップの入場料収入(約23億円)で、総収入(約80億円)の約29パーセントを占めています。観客が多いため、必然的にグッズの売り上げも多く、これは総収入の約10パーセント(8億円)に上ります。
 
 Jクラブの収入の3本柱は、この入場料と物販、そして広告費です。ただ、この広告費の多くが親会社から出ているクラブもあります。入場料収入や物販は、基本的にチームの成績に比例しますから、不確定要素が強い。結局、親会社におんぶにだっこというケースも少なくないんです。
 
 では、エイバルのような小さなクラブが、なぜ浦和と同じ収入を得られるのか。それはリーグからの分配金があるからです。2017-2018シーズンは、放映権料を含め約4270万ユーロ(約55億5000万円)で、収入の大きな柱がそれです。浦和は約5億3000万円ですから雲泥の差ですよね。
 
 入場料と物販に頼っていると、モノが売れなくなったら終わりです。ラ・リーガは、それで破産してしまうクラブがないよう放映権を世界中に売り、分配金を手厚くしているんです。レアル・マドリーTVやバルサTVなど独自のチャンネルを持っているクラブは、その放映権も売ることができます。実はベティスも中堅クラブでは珍しく自前のチャンネルを持っています。
 
 高額の分配金があるとはいえ、それをすべて自由に使えるわけではありません。ラ・リーガはクラブごとに総年俸の上限を決めるサラリーキャップ制を導入しています。2017-2018シーズンのエイバルは約3320万ユーロ(約43億円)でした。
 

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